諜報部長!お世話になってます!
さすらいの情報収集家Kです
今回は、「英国のEU離脱」についてです。
しっかりチェックしておきましょう!
■イギリスのEU離脱 今どんな状況?
一時期は連日報道されていました、
イギリスのEU離脱。
その後の状況について聞くことが
少なくなっていましたが、
具体的な離脱交渉は
今どのような状況なのでしょうか。
前回ご紹介した日欧EPAとの
兼ね合いもありますので、
日本への影響も少なからずありそうです。
ということで、
今回はイギリスのEU離脱について
まとめてみます。
●なぜイギリスはEU離脱するのか?
イギリスがEU離脱を決めたのは、
国民の意志でした。
2016年6月23日に行われた国民投票で、
離脱支持51.89%、残留支持48.11%
という僅差で決定されました。
その国民投票を行った当時のキャメロン首相は、
このような結果になることを
想定していなかったのでしょう。
というのも、イギリスでの国民投票は
これまで3回行われ、そのいずれも
政権の継続を裏付けるために
政治的に使われてきた経緯があります。
ギリシャの経済危機を発端として
信用不安が広まったEUでは、
その信用回復を図るため
緊縮財政が余儀なくされてきました。
また、東ヨーロッパからの
移民の急増も加わり、
イギリス国民の不安が増大していました。
こうした背景の中で、
反EUを掲げるイギリス独立党が支持を伸ばし、
同じ与党内からも
「国民の意志を確認するべきだ」
という圧力が高まり、
国民投票に踏み切ったわけです。
(踏み切らざるを得なかった
と言うべきかもしれませんが)
その時のキャメロン首相は
「われわれがEUに加盟する第一の理由は
単一市場に参加し、市場のルール作りを
後押しできることだ」と訴えています。
ですが、緊縮財政への対応や
移民増大に対する明確な答えを
出せていませんでした。
そのこともあってか、
EU離脱という結果に繋がったようです。
まとめると、EU離脱の理由は、
EUの緊縮財政や移民政策などへの
国民の不満が大きな要因だった
という事です。
●国民投票後の動き
国民投票で離脱が多数
となったことを受けて、
キャメロン首相は辞任を表明します。
「次の目的地に行くには、私は適任者ではない。
イギリスには新しいリーダーシップが必要だ」と述べ、
その後に次期首相がメイ氏だと決まると
「メイ氏を全力で支える」と語ったそう。
ある意味で英国紳士の振舞いでしょうか。
潔いというべきか、
僅差だったことを考えると
潔すぎというべきか。
いずれにしても、
国民投票の結果により、
EU離脱に向けて
具体的に進んでいくことになりました。
ちなみに、後任のメイ首相は
当初EU離脱反対派でしたが、
民意を受けて仕事を全うしよう
と考えているようです。
就任時の会見で
「特権的な少数の人たちのための国ではなく、
国民全員のためになる国のビジョンを示し、
今まで以上に国民が自分の生活を
自分自身で決められるようにします。
私たちはみなさんとともに、
より良いイギリスを作っていきます」
とEUへの批判を含め
EU離脱へ向かう考えを示しています。
また、就任3か月後の党大会の演説で、
「ブレグジット投票という静かな革命を経て、
英国は変わらなくてはならない」
「このチャンスを生かしましょう」
と呼びかけています。
その後、EU加盟国の代表的立場にいる
ドイツのメルケル首相との会談をはじめ、
各国首脳との会談を行う度に、
「友好的・平和的に離脱を進めるべきだ。
強行的な立場をとれば
手痛い代償を払うことになるだろう」
というような論調の批判を受け始めます。
マスコミ各社も同様の報道で加熱し、
ブレグジットが強行的か(ハードブレグジット)、
柔軟的か(ソフトブレグジット)で、
イギリスの動向が注目を集めるようになります。
そうした中、2017年1月17日に
メイ首相がEU離脱交渉の方針を演説しました。
「半分残り、半分出るようなことはない」
と完全離脱を明言。
「人、モノ、サービス、資本」
の自由な行き来を原則とする
EUの「単一市場」への参加よりも、
移民規制を優先、EU司法裁判所からも脱退する
と表明し、事実上のハードブレグジット宣言をしました。
2017年3月29日には、EU離脱を正式に通告。
いよいよ具体的な離脱交渉に
入っていくことになります。
正式通告を受けたEUは欧州理事会で
交渉ガイドラインなどの手続きを策定。
またイギリスでは、下院総選挙を経て
準備を整え、2017年6月19日
離脱交渉が開始されました。
その後のスケジュールとしては、
数週間に1回のペースで離脱交渉を行い、
現段階では第5回の交渉が予定されており、
最終的には2018年10月末までに決着する予定
(欧州委員会が想定する交渉期限)となっており、
イギリスは原則、2019年3月29日24時に
EUを離脱するとしています。
●EU離脱交渉の中身
では、具体的な離脱交渉の中身は
どのようなものでしょうか。
第1回の離脱交渉の際に、
イギリスから次のような方針が出されました。
在英EU市民の権利保護に関する基本方針
「特定期日」前に来英し、5年以上居住した
EU市民は定住資格が付与され、
EU離脱後もこれまで同様に
公共サービスを受けることができるとともに、
5年に満たない場合も
暫定期間が適用されることなどを内容とする。
また、この方針と同様に
EU諸国に居住するイギリス国民に対しても
同様の権利を保障するよう
相互主義を打ち出してきています。
その他の論点については、
しっかりとまとまっていませんが
主に次のようなことが論点になる
とされています。
(1)市民の権利保護
イギリス国内に在住するEU市民、
EU域内に在住するイギリス国民の権利について
(2)財政問題の解決
EU側がイギリスに求める清算金や債務等について
(3)通商上の問題の解決
単一市場から離脱する前後の物品等の取扱い。
離脱後の通称条約等のあり方等
(4)EU行政的手続き等の問題の解決
EUの行政上の手続きの移管等の調整、
EU機関の運営上の手続き等
(5)その他
アイルランドと北アイルランドの
往来や在留問題、キプロスのイギリス軍基地等
まずは、イギリスが人権的な観点から
最優先されるべき項目
「市民の人権保護」を打ち出し、
EU側も概ね受け入れる姿勢のようです。
これは、人権保護の観点から
EU側が否定しにくいことを見越して
「相互主義」に合意させるのが
イギリスの狙いであった気がします。
人権分野で相互主義が合意されれば、
今後の財政・通商上などの様々な問題についても
イギリス側が有利に運べると見ることができます。
そもそも、イギリスの狙いは、
通商上は現状ルールを維持、
財政上は緊縮財政の撤廃・負担回避、
移民の制限等の
「おいしいとこ取り」を考えているため、
通商上でも相互主義の流れとなれば、
願ったり叶ったりということになるわけです。
一方、EU側としては、人権上の問題は
移民問題とも繋がる問題であり、
異議を唱えたいところではあるのですが、
だからと言ってイギリス国民に
制裁的な立場をとることができない問題です。
また、通商上についても、
EU外諸国と同様の関税や手続きを取るように
進めたいところですが、
それに伴い企業等への負担増をどうするか
良い答えがない(※)わけです。
※EU加盟国のメリットである 単一市場からイギリスを追い出せば、 同時にEU域内企業や行政の負担が 増加してしまう
つまり、EU側としては、身を切りながらも
EUとしての統制とメンツを保つか
どうかが鍵(※)になってきそうです。
※もしイギリスに大きな負担を強いる形に ならなかった場合、EU離脱を考える国が 続出する可能性があるため。
結局のところ、イギリスは国民の声を
反映した行動を起こしたわけですが、
EU側はメンツを重視する格好になりそうです。
そうした観点から見ると、
EU側は高いハードルを
下せないでしょうから
交渉が難航するのは必至
だと言えそうです。
以上、いかがでしたでしょうか?
個人的には、イギリスが国民投票で
離脱を決定した段階で、
EUの敗北が確定していたと思います。
国民投票前、EU離脱が
如何にデメリットが多いかを
宣伝してきましたが、
そもそもEU自体を
不審に思っている人々が多いので
一般国民は懐疑的だったわけです。
(マスコミには浸透しましたが)
EU側は、その宣伝の通り
イギリスにデメリットを与えなくては
示しがつきませんから、
自ら痛みを伴う主張をし続ける
ことになるでしょう。
そうした意味から
今後の交渉が難航するのは当然ですが、
EU側が徐々に恨み節になりつつあるのは
見ていて居た堪れないですね。
離婚するけど、仕事上は大切なパートナー
というケースの離婚調停を見ているようで、
何とも言えない気持ちになります。。
いずれにしても、
日本にも大なり小なり
影響がありますから
動向を見守っていきましょう。
それでは、今週の報告は以上です。
次回も宜しくお願い致します。