こんにちは!諜報部長!
税理士紹介サービスを営む、諜報部員のSです。

今回のテーマも引き続き、
「仮想通貨関連」
に関してのお話です。

<前3回:下記リンク参照> 
※仮想通貨関連でよくあるお問合せ-①課税対象になる行為は?仮想通貨関連でよくあるお問合せ-②節税方法は?仮想通貨関連でよくあるお問合せ-③事業化・法人化は?(メリット)

仮想通貨・暗号通貨に関する内容は、
昨年後半の価格高騰以降、
利益・税金の計算、申告等について
応対する必要のある人が増え、
お問合せが増加した分野です。

今回のテーマでは、
その「仮想通貨関連」の
よく頂くお問合せ内容について、
まとめていきたいと思います。

■仮想通貨関連でよくあるお問合せ-④事業化・法人化は?(デメリット・リスク)

前回は仮想通貨取引における
「事業化・法人化」についての
メリットをお話しました。

個人事業化においては、

  • 経費算入
  • 他の所得と損益通算
  • 青色申告適用

法人化においては、

  • 経費算入
  • 最高税率の低下
  • 青色申告適用

こういった点でのメリットを
お話していきました。

今回は、「事業化・法人化」の
デメリットやリスクについて
お話をしていきます。

●メリットばかりに見える

前回の内容でも触れましたが、
仮想通貨取引を個人で行っている方が、
雑所得に分類される状態で継続するのと、
個人事業や法人として取引を行うのでは、
大きく変わるのが事実で、
一見、そちらで進めない理由は無い
というように見えます。

ですが、当然ながら、
メリットばかりではありません。

正直、税理士さんの中には、
節税する為には法人化が最も良い、
というのは理解していても、
諸々リスクを考慮して、
仮想通貨の取引の為だけに法人化するのは
あまり進めない人もいます。

本当に個人での取引をやめて、
事業化する、法人化するという決断は
デメリットも知った上で実施するべきです。

●個人事業化、法人化のデメリット

雑所得において分類されていた
仮想通貨取引を別の所得にするには、

  • 今の活動を個人事業として行う
  • 今の活動を法人として行う

この二つしかありません。

それぞれのデメリットを考えていきます。

【個人事業として行うデメリット】

  • 事業活動として否認される可能性
  • 個人事業税の発生
  • 確定申告は継続的に必ず実施

⇒補足の説明をしていくと、
まず、個人事業というのは一定要件が無いと
後々否認されてしまう可能性が大いにあります。
何故かというと、雑所得より事業所得分類の方が
得なケースというのは基本的に多いため、
少額の取引や継続性が無いものでも
事業所得に分類してメリットを
得ようとする人が多いからです。

その為、開業届(事業開始届)を税務署に提出し、
ご自身としては事業という認識で進めていても、
継続性や規模、その他の状況を加味して
税務署が諸々意見を申し出る可能性が存在します。

次に、雑所得では存在しないのですが、
個人事業ということで事業活動を行う場合、
所得税、住民税とは別に
個人事業税という新しい税金が発生します。
収入から必要経費を差し引いた所得額が、
290万円の控除額を超えていた場合、
一律5%で課税されます。

最後に、事業主の場合、
確定申告は毎年必須になります。
事業主でもなく、白色申告だという場合は、
極端な話、納税額が無い(基準以下)なら
無申告でも問題ないのですが、
青色申告の場合は、申告を継続しないと、
最終的には青色申告取り消しになります。
損失の繰り越し等を継続する場合も
考慮すると、何にも取引していなくても、
絶対に申告が必要になってくるということです。

【法人として行うデメリット】

  • 法人の設立費用、維持費
  • 否認された場合のリスク
  • 少額利益での税率
  • 個人資産を法人に移すときの問題
  • 法律が変わった場合

⇒法人の方が、メリットも大きい分、
デメリットやリスクが多岐にわたります。

まず、法人は設立費用が発生します。
ご自身で進めるか、専門家に頼むかでも
異なりますが、
合同会社でも10~15万円くらい、
株式会社なら最低25~30万円くらいの
費用が必要となります。
さらに、法人は利益が発生しなくても、
法人の住民税(約7万円)は必要ですし、
現在の自宅が賃貸物件や集合住宅の場合、
法人登記住所としてオーナーや管理組合が
認めてくれない場合があります。
その場合は、法人登記の住所が必要になったりします。

次に、新設法人が持つリスクなのですが、
振り込め詐欺等の影響により、
新設法人が法人名義の口座を開設することは
結構ハードルが高くなっています。
また、仮想通貨の取引所のアカウントも
必要となってくるでしょう。
この際、双方の金融機関等で
口座開設、アカウント開設の
審査結果が芳しくないとき、
そもそも話が前に進まないという場合があります。

税率においては、上限の法人実効税率は
所得税よりも低いことを前回触れましたが、
そもそも利益が大きくない場合、
個人の税率は幾段階にも分かれている為、
個人の方が低いというケースあります。

そして、恐らくこの点が多くの方にとって
デメリット・リスクに感じられる点だと思いますが、
保有している個人の仮想通貨を法人に移転する場合です。
通常の考えであれば、時価で譲渡となります。

つまり、時価(譲渡日のレート)で法人が
個人名義のものを買い取ることになります。
当然ですが、無償で渡すことは出来ません。
厳密にいうと、無償で渡してもいいのですが、
法人は「時価○○万円を0円で取得」
したので○○万円が利益、
個人はみなし譲渡が適用されるので、
時価○○万円で売却したのと同じ利益、
という全く意味のないどころか、
本来以上の利益が加算され、
実態のない利益まで加算されてしまいます。
※さらに税務調査で発覚なら、追徴課税も付加。

売却(譲渡)だろうと、出資だろうと、
個人分を法人側へ移転しようとするとき、
含み益・含み損が確定されるという認識が必要です。

最後はリスクの問題です。
以前にも触れたことがありますが、
株式やFXの取引は、申告分離課税制度が
採用されており、金額に関わらず
一律の税率(約20%)です。

仮想通貨取引に関しては、
現在は適用されていませんが、
もし、申告分離課税が適用となった場合、
法人よりも個人で取引した方が
税制的には大きなメリットになります。

その時に、法人から個人に仮想通貨を移転する、
といっても、上記同様、含み益の確定が発生し、
時価での法人・個人間取引が必要です。

さらに、現段階の仮想通貨は、個人・法人共に、
含み益・含み損で利益の計算は行われませんが、
法律が変わるとここが変わる可能性もあります。
恐らく、個人名義で保有している仮想通貨が
取引も全く実行していないのに含み益で課税される、
ということは無いと思いますが、
法人保有の場合は、保有しているだけでも、
含み益・含み損を決算時に毎年組み込む必要が
出てくる可能性があります。

※上記は2018年7月末段階での情報です。

●やはり、自己責任・・・

前回、今回で仮想通貨取引を
事業化・法人化で行うことの
メリットやデメリットについて
まとめてみましたが、いかがでしょうか?

やはり、法律がどのように動くか
明確ではない以上、どの選択をするかは、
ご本人の判断・自己責任となります。

ただし、個人での雑所得で継続する場合、
大きな税額を節税することが難しい、
というのだけは、間違いない状況です。

その上で、どのメリット・デメリット、
リターン・リスクを重視していくかは、
まさにご自身の判断となりますので、
是非、積極的に情報を収集する意識を
持って頂き、ご判断が良い結果と
なっていくことをお祈り申し上げております。

ということで、今回の報告は以上です。

仮想通貨を保有されている方、
法人での取引や運用を検討中の方、
アドバイスを求める場合は、
是非、税理士にご依頼ください。

ただ、現段階では、
仮想通貨に関わる申告応対は、
応対事務所が限られているので、
是非こちらに相談ください。

税理士紹介ネットワーク~タックスコンシェルジュ~
https://www.tax-concierge.net/

また、次回からは、
別テーマで宜しくお願い致します。