お世話になってます!
さすらいの情報収集家Kです。
さて、今回のテーマは、
「米欧貿易摩擦」
についてのお話です。
しっかりチェックしておきましょう!
■米欧貿易摩擦 これからどうなる?
米国がEUに対して報復関税をかける方針を表明しました。
米中貿易戦争が深刻化する最中に
今度は米欧貿易戦争の火ぶたが切られるのでしょうか?
どのような状況なのか?
今後はどうなるのか?
まとめてみます。
●米国がEU製品8000億円分に報復関税
まずは、ニュースからです。
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米、8000億円のEU製品に関税発動へ WTOが承認
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50527670S9A001C1000000/
2019年10月2日 日本経済新聞
米国は2日、欧州連合(EU)による
航空機大手エアバスへの補助金を巡り、
EUに対する報復関税を18日にも発動する方針を表明した。
世界貿易機関(WTO)が2日、
米国がEUに年最大75億ドル(約8千億円)相当の
報復関税を課すことを承認したため。
EUも報復を検討中で、米欧の貿易摩擦は一段と激しくなりそうだ。
WTOは米国とEUを仲裁する形で、対抗措置の上限額を決めた。
WTOの仲裁で決めた金額としては過去最高となる。
WTOによると、米国は年約105億ドルの報復関税の
承認を求めていた。
今回の判断では米国の要求の約7割を認めた。
これを受け、米通商代表部(USTR)は2日、
最大75億ドル相当の輸入品に報復関税を課すと発表した。
航空機に10%、ワインやチーズなど農産品や
工業品に25%を上乗せする。
WTOに紛争処理機関(DSB)の会合を14日に開き、
正式承認するよう要請した。
この手続きを踏まえて18日に発動する。
EUはこれに先立ち「対抗措置は非生産的で、
互いに関税をかけ合えば双方の企業と市民に
打撃を与えるだけだ」(マルムストローム欧州委員)
との懸念を表明した。
エアバスも2日、「関税は航空産業だけでなく、
世界経済全体に不安と混乱を生じさせる」との声明を発表した。
同社の調達の約4割は米国で、
米国にもマイナス影響を与えると強調した。
米欧は様々な貿易紛争を抱えており、
航空機を巡る対立は新たな火種となる。
トランプ政権は2018年6月、
鉄鋼とアルミニウムに追加関税を発動し、
EUも米農産品などに報復関税をかけた。
米国は自動車への追加関税も検討している。
関税を避けるためEUは18年夏に
米国と貿易交渉に入ることで合意したが、
農産品で対立して協議はいまだに進んでいない。
今回のトランプ政権の報復関税はWTOルールに沿った手続きで、
国内法を使って一方的に制裁関税を課した
中国のケースとは性質が異なる。
約3600億ドルの中国製品を対象とする
米中貿易戦争と比べれば規模も小さい。
ただ米欧間の新たな貿易障壁となり、
経済の打撃となりそうだ。
米国とEUは04年からエアバスと米ボーイングへの
補助金の違法性をめぐって争い、それぞれWTOに提訴していた。
WTOは巨額の補助金が競争環境をゆがめると判断し、
双方に補助金の適正化を義務づけた。だが米国、EUとも
相手がWTOの決定を受け入れずに
補助金の支給を続けているとして互いを再提訴していた。
WTOの紛争処理で最終審にあたる上級委員会は18年5月、
EUのエアバスに対する補助金はWTO協定違反とする判決を下し、
米国の勝訴が確定した。
一方、19年3月には上級委は米国による米ボーイングへの
補助金の継続も不当でWTO協定違反とする最終判決も出した。
この結果、約15年にわたる通商紛争は米欧の痛み分けとなった。
EUもWTOに対抗措置を申請し、承認を待っている。
EUは米工業品や農産品など幅広い分野の
200億ドル相当の製品に関税を課す準備を進めている。
WTOの承認が出るのは20年になる見通しだ。
WTOの紛争処理の手続きでは、
対抗措置を取るにはDSBに承認を得る必要がある。
相手国が対抗措置に対して異論を申し出た場合は
WTOが仲裁する形で、WTOが上限額を決める。
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米国が今度はEUに対して報復関税を発動することを表明しました。
ことのキッカケは、米欧の旅客航空機の開発競争にあります。
●米欧の旅客機市場競争
1950年代に米ボーイングが従来のプロペラ旅客機の
2倍の速度で2倍の旅客数をのせる革新的な機体、
民間ジェット旅客機(ボーイング707)を開発しました。
この革新的機体は、長距離国際線に次々と採用され、
改良が加えられながら1960年代には
ボーイングが旅客機市場を席巻することになります。
後塵を拝する他の欧米企業も
ジェット旅客機開発に取り組むものの開発費が高騰し、
1社では賄いきれない状況に陥り、
国際的な協力体制を敷き始めます。
1970年にフランス・ドイツ・スペイン・イギリスの4カ国の
航空宇宙機器開発製造企業が共同出資し、エアバス社を設立。
当初は苦戦していたエアバス社ですが、
フランス・ドイツなどの政府の全面支援によって体制を立て直し、
大躍進をすることになります。
その結果、1999年にはエアバスが受注数で
はじめてボーイングを抜き去るまでに成長。
以後、ボーイングとエアバスは抜きつ抜かれつの
熾烈な競争をしてきた経緯があります。
●問題は政治との密接な関係
EUが主導するエアバスの急激な躍進を快く思わない米国は、
2004年にWTOに問題提起します。
その内容は、EUがエアバスの各機種の
「立ち上げ支援」と称して政府援助を行ったり、
売上が一定条件に満たなければ
返済が免除される低利融資を行ったり、
その他にもインフラ整備や研究開発にも助成金を出しており、
不当な競争環境にあるとしたのです。
WTOでの長年にわたる審理の結果、
EUのエアバスに対する補助金等は
WTO協定違反とする判定が下され、米国の勝訴が確定。
一方で、EU側も米国のボーイングへの
補助金等も不当であると提訴しており、
そちらも同様にWTO協定違反との最終判定が下されており、
米欧両者が痛み分ける結果となっていました。
今回の米国側の報復関税措置は、
そのうちの米国側の報復関税をWTOに承認されたため、
実施を表明したというわけです。
ですから、今後はEU側にもWTOから同様の報復措置が
承認されることになると思われます。
そもそも航空機は、軍事的な意味合いも強いこともあり、
古くから各国政府の思惑が強く影響を及ぼしてきました。
アメリカのライト兄弟が
1903年に世界初の有人飛行をした直後から
軍事利用が進められてきました。
当のライト兄弟は、
米軍、ドイツ軍、イタリア軍、日本軍にも
営業をかけていたほどです。
実際、第一次大戦初期には敵地偵察に使われ、
1915年にはフランス空軍が固定銃を搭載し実戦投入されています。
1930年代頃からレシプロエンジンに代わる新たな推進装置として
ドイツ・イギリス等でジェットエンジンの研究が進められています。
ジェット戦闘機が本格的に実戦投入されたのは、
朝鮮戦争(1950年~)からで
米国の航空産業が急速に発展したのもこの時期なのです。
つまり、現在の航空産業は
軍事・政治と共に発展してきた経緯があり、
過去を振り返れば切っても切り離せない関係にあるのです。
●今後はどうなる?
過去を振り返れば民間航空産業は
軍事的な意味合いが強い産業でしたが、
近年はその意味合いが減少しつつあります。
その一方で、純粋な民間旅客機の需要は
世界経済の成長に伴って今後とも伸びていくと予想されますが、
技術的にはコモディティー化が進んでいると言われ、
価格競争が激化する可能性が高まっています。
特に、中国の中国商用飛機有限責任公司(COMAC)が
現在、ボーイングやエアバスと競合する航空機開発を進めており、
これらが新興国市場で低価格で販売されるような状況となれば、
米欧ともに大打撃となる可能性があります。
そうなるとすれば、米欧共に
ボーイングやエアバスに対する補助金等を
より増やさざるを得ない状況に陥る可能性も高く、
米欧対立が一転して、対中共闘する可能性も
模索されることになると思われます。
つまり、提訴し始めた2004年の状況と異なり、
今はこれ以上揉めることは米欧の航空産業にとって
得策では状況にあるのです。
とは言え、目先では米国の報復関税に
EU側が対抗措置をするのは必至ですから、
両国の国民の対立が強まれば、
今後も続く可能性もないとは言えません。
加えて、今回の問題はあくまでも航空機の話ですが、
米欧が争っているのは、自動車や農産品などもあり、
今回をキッカケに他産業へも波及する可能性も
あることにも注意が必要です。
以上、いかがでしたでしょうか。
今回の米欧貿易摩擦は、
お互いが痛み分けで終わると予想され、
その影響範囲は限定的だと思われます。
が、他産業にも波及してしまうと、
大きな問題に発展する可能性も少なくない
と言えるでしょう。
特に、トランプ大統領は対EUの貿易赤字が
過去最高水準に達していることを問題視しており、
これを国内の支持を得るために利用し始めると、
行くとこまで行く可能性がないとは言えません。
そうなると世界的な先行き不透明感が増し、
日本へも悪影響が出てくるのは間違いないと思います。
今後の動向に注目ですね。