お世話になってます!
さすらいの情報収集家Kです。

さて、今回のテーマは、
「著名人の無申告問題
についてです。
しっかりチェックしておきましょう!

チュートリアル徳井 法人税無申告問題

チュートリアル徳井 法人税無申告問題

ワイドショーなどで連日取り上げられている
お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実氏の
法人税無申告問題。

複数年に渡って法人税等が無申告だったことが発覚し、
注目を集めています。

一体どのような問題なのか、まとめてみます。

●ことの経緯は?

お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井氏が設立した
個人事務所「株式会社チューリップ」が
3年間にわたって出演料などの所得を全く税務申告せずに、
東京国税局からおよそ1億円の申告漏れなどを
指摘されたと報じられました。

これに対して、本人が記者会見を行い、
報道内容を認め謝罪。

この時点での内容は、次の通り。

───────────────────────────────────

【当初の報道内容】

  • 2016~18年の3年間、約1億2,000万円の所得を申告しなかった。
  • 2012~15年の3年間、旅行費用や衣装、装飾品などの代金が
    経費として認められず、約2,000万円の所得隠しを指摘された。
  • 追徴課税の納税額を1億5,700万円と間違えて発言し、
    会見終了後、関係者が3,700万円と訂正した。
  • 無申告だった理由は、「想像を絶するルーズさが原因」と説明。
    税理士は雇っており、納税するように言われていたが、
    先送りにしていた。
  • 「それ以前は、しっかり申告していた?」と記者に聞かれ、
    「そうですね」と回答。

───────────────────────────────────

しかし、その後に各社の取材などで、新事実が続々と発覚。

───────────────────────────────────

【その後に発覚した内容】

  • 2009年に設立以来、各年の申告期限内に
    1度も申告をしていなかった。
  • 2010~12年も申告漏れがあり、
    12年6月に3年分をまとめて申告した。
  • 2013~15年も申告漏れがあり、
    15年7月に3年分をまとめて申告したが
    税務署からの再三の督促にもかかわらず納付しなかったため、
    16年5月頃銀行預金が差し押さえられた。
  • 2018年9月頃に税務調査を受け、16~18年の3年分の申告漏れと
    同時に12~15年の旅行費・衣服代等の一部が否認された。
  • 2018年11~12月に税務署の指導に従い、修正申告し
    重加算税・追徴課税を含む約3,700万円を納付。
  • 2018年3月期までの7年間に消費税の申告漏れや無申告を指摘され、
    約2,100万円を追徴された。
  • 同期間の役員報酬の源泉所得税も未納付加算税などを含め
    約4,400万円を追徴された。
  • 個人の所得税も申告漏れがあり、2012~14年の3年分の申告漏れを
    15年7月に申告、15~17年の3年分の申告漏れを
    18年11月に申告した。
  • 記者会見で「1億5,700万円を一括で支払った」と説明し、
    会見後に3,700万円に訂正したが、
    1億5,700万円の方が正しかったらしい。
  • 法人設立以来、社会保険加入手続きを行っていない。
    以後、速やかに行う。

───────────────────────────────────

本人が言っている“想像を絶するルーズさ“のためか
税務申告を繰り返し怠っており、その都度(少なくとも3回)
税務署に指摘されて、修正申告・追徴課税を
行ってきたことがわかります。

つまり、当初の会見で「以前はしっかりと申告していた」と
受け取れる発言はウソだったということになります。

また、当初の報道では3,700万円の追徴課税とされていたのですが、
直近までの報道によれば、消費税・源泉所得税等々を含め、
1億5,000万円を超える追徴課税があったと報じられています。

●脱税ではないのか?

今回の件で、「申告漏れ」「所得隠し」「無申告」など
似たような印象の単語が出てきていると思います。

いずれも良くないことだというのはわかると思いますが、
「脱税とは違うの?」と思っている方も
いるのではないでしょうか。

そもそも「脱税」とは、税法上、
「偽りその他不正な行為により納税を免れる行為のこと」
と定義されています。

つまり、“故意に”納税を逃れること」が脱税となります。

具体的には、故意に売上を減らしたり、
架空の経費を計上したりすることで、
所得を少なくすること、いわゆる「所得隠し」が脱税です。

逆に言えば、「脱税」とは
「故意を立証できなければ脱税ではない」
ということになります。

例えば、計算の間違いや税法の解釈の違いなどよって
所得を少なく申告してしまった場合は、「申告漏れ」として扱われ、
あくまでも意図的な税金逃れではないとされます。

このように、脱税かどうかのボーダーラインは
故意の立証にあるため、自白でもない限り
「申告漏れ」で処理するケースが多いのが実情のようです。

ただし、ごまかした税金の金額が大きい場合は、
より悪質であると認められる可能性が高く、
「脱税」として扱われることがあります。

そのボーダーと言われているのが、
“1億円”です。

1億円以上の税金をごまかしたと認められた場合には、
国税局が「脱税」として検察に告発する可能性があります。

その後、検察が起訴し、有罪となれば
刑事罰(10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金)
を受けることになります。

今回の徳井氏のケースに当てはめてみると、
実はかなり微妙な状況にあるのです。

当初の報道では、脱税ではなく「3,700万円の申告漏れ」
という内容の報道がほとんどでした。

ですが、その後の一部報道で追徴額1.5億円を
超えることが伝えられはじめると、
徐々に「悪質だ」とする報道が増えてきています。

つまり、「脱税のボーダーライン1億円以上」
を超えてきている可能性があるのです。

現段階では正確な金額がまだわかりませんので
何とも言えませんが、脱税として告発される
ギリギリのラインにいるのは間違いなさそうです。

そういった意味でも今後の動向に注目です。

●法人で節税するのは良いのか?

脱税か否かはさておき、
そもそも法人で節税するのは良いのでしょうか?

実は、徳井氏が設立した株式会社チューリップのように、
芸能人やプロスポーツ選手などが自分1人で法人を設立するのは、
決して珍しいことではありません。

高い報酬をもらっている芸能人等は、
そのまま所得税として納税すると
累進課税で最高税率45%となってしまうため、
法人を設立して法人税率23.2%で納めた方が
節税できるというわけです。

その他にも、法人は経費として認められる幅が広がりますから、
実質的にお得になることが多いわけです。

もちろん現行法では適法ですから、
法人で節税するのは問題ありません。

ですが、近年、国税庁はこのような芸能人1人の法人を
問題視する向きがあります。

そうした法人を「支配芸能法人」と呼び、
「節税手段をもたないサラリーマンに比べ、
著しく公平を欠く」と指摘しています。

また、支配芸能法人をどのように対処していくべきか
も議論されており、もしかすると、
今回の問題をキッカケとして
1人だけの芸能法人の設立を認めない
といった対策がなされる可能性もなくはないのです。

つまり、税法上の観点からも今回のケースは
注目の事例ということになるかもしれません。

以上、いかがでしたでしょうか。

今回の徳井さんのケースは、周囲の知人等から話を聞き、
節税や万が一の際の蓄えという意味合いで
法人を設立したのでしょう。

芸能人は不安定な職業ですから、ある日を境に
一気に仕事が無くなってしまうことも少なくありません。

万が一そうした事態になったとしても、
法人にお金を残しておけば
役員報酬で生活を安定させることができますから、
リスクヘッジ対策になるわけです。

ですが、今回のケースを振り返ってみると、
リスクヘッジで用意したはずの法人が原因で活動休止に追い込まれ、
その法人からのお金に支えられていくことになるわけですから、
なんとも皮肉な結果になってしまったのではないでしょうか。

そうしたことも合わせて、今回の事件は芸能法人の
あらゆる側面を見せてくれた事例として
今後も語り継がれることになる気がします。

また、今後の調査によっては「申告漏れ」だったものが、
「脱税」となり刑事事件に代わっていく可能性がありますので、
そのあたりも注目したいところです。