諜報部長!お世話になってます!
さすらいの情報収集家Kです。
今回は「副業解禁」についてです。
しっかりチェックしておきましょう!
■年度内に副業解禁へ 今後どうなる?
お金諜報部ではこれまでも
副業解禁の動向についてまとめてきましたが、
ようやく副業解禁が現実のものになるようです。
ですが、各メディアの記事を見ると
どうやら否定的なものの方が多い気がします。
「もっと稼ぎたい」
「もっといろんな経験をしたい」
と考えているサラリーマンにとっては
朗報な気がしますが、
実際ところどうなのか、まとめてみます。
●“副業解禁”ってどういうこと?
以前もまとめてきた通り、
政府が進める副業解禁とは
「モデル就業規則の改定」のことです。
モデル就業規則とは、
厚生労働省が公開している
就業規則のテンプレートですから、
これを改定することで
各企業の就業規則も変わってくるだろう
という意図のようです。
そもそも、政府がモデル就業規則を
改定するに至った背景としては、
働き方改革で労働環境を改善したり、
人手不足の解消、
労働市場の流動性向上、
所得向上等が主な目的とされています。
ですが、本当に働き方改革を行う為には、
様々な法改正や新設などが
必要なはずなのですが、
モデル就業規則改定に留まったのには
理由がありそうです。
●そもそも副業禁止は憲法違反
実は、会社の就業規則などで
副業禁止することは、
憲法違反であるとの指摘があります。
憲法第22条では、このように規定されています。
「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」
つまり、公共の福祉に反しない限り
誰でもどんな職業にでもつけるというわけです。
ですから、「国会が個人の職業を規制する
あらゆる法律を作ることはできない」のです。
文面を文字通り読めば明らかなように、
本業や副業といった概念も規定されていませんし、
株式や不動産投資などを専業にする投資家や
ネット動画で収入を得ている動画配信者等、
どんな形で収入を得てもいいし、
それらが職業として否定されることはありません。
事実として、我が国の法律で
副業を禁止するものは原則ありません。
(但し、公共の福祉に反する場合や公務員の副業は認められません)
ですから、政府としては
「以前からずっと副業は解禁されている」
という立場なわけです。
では、いまなぜ副業解禁と
言われているのでしょうか?
●なんでいまさら副業解禁?
現政権が推進する働き方改革を
検討する中で、副業を推進する検討がされました。
その際に注目されたのが
先にご説明したモデル就業規則の副業禁止規定でした。
本来、副業禁止は憲法違反になりかねないので
立法することはできないのですが、
モデル就業規則としてうっかり(?)
副業禁止を推奨する形になってしまっていたのです。
実は、このモデル就業規則が
副業を抑制しているという指摘は
昔からありましたが、
近年就業規則に関する多くの判例が
「労働者が労働時間外を
どのように使うかは自由である」
と示されてきたことも大きな要因でしょう。
そうしたことから、
「いつか変えなくては・・・」
と思っていた厚生労働省が
働き方改革を利用して
変えようとしている
というのが実情という気がします。
それは、現在検討されている
厚生労働省のガイドライン骨子を見ると
透けて見えてきます。
●厚労省のガイドライン骨子「あとは企業で取り組んで」
実際に副業を解禁するとなると、
様々な問題が生じてきます。
例えば、「労働時間の管理」
「労働者の健康管理」
「各種保険の加入」などがありますが、
厚生労働省はいずれも現行法で
対応可能と考えているようです。
具体的には、次の通り。
懸念 | 厚労省の考え | |
---|---|---|
労働時間の管理 | 副業により労働者が過労働にならないか? | 労働基準法第 38 条「別の職場の労働時間も通算して規定を適用する」ので、労働者が自己管理し申告する等で労働時間を管理して残業代支払いや過労働にならないように事業者側が配慮すべき |
労働者の健康管理 | 労働者の健康状態を把握できるのか? | 労働安全衛生法に基づき事業者側で健康診断などの必要な措置を取るべき |
各種保険の加入 | 副業する労働者にもちゃんと各種保険が適用されるのか? | 現行保険制度に基づき主たる事業者の被保険者とする、各事業者が支払う報酬で保険料を按分する等により適切な措置を取るべき |
つまり、副業に伴い想定される問題は、
副業を認める企業・受け入れる企業が
現行法・制度に基づいて、
それぞれ対応するべきことであり、
「あとは企業で取り組んで」と言うわけです。
そうなると、企業側としては
副業を解禁するのは面倒くさい
と思うのは必然でしょう。
経産省の調査によれば、
副業を認めていない企業は85.7%に上ります。
ちなみに、副業したいと
考えている労働者はわずか5.7%です。
そうした状況で、企業側の負担が増え、
副業を求める労働者も少ない
となれば推進すべきものも進まないのではないでしょうか。
このように、厚労省としては、
モデル就業規則さえ変更すればOK
と考えているのが透けて見えるわけです。
当然もめることになるでしょうから、
お茶を濁す程度のガイドラインも併せて作ることで
責任は果たしたと考えているのでしょう。
●副業解禁は今後どうなるのか?
こうした状況で、今後副業解禁は
どうなるのでしょうか?
確実なのは、モデル就業規則の改定と
ガイドラインの策定です。
これにより企業は原則として
副業を認めなくてはならない
圧力が強まりますが、
面倒なことはしたくないでしょうから、
当面は様子見ということになると思います。
そもそも企業が就業規則を改定するには、
労働組合や労働者の過半数を
代表する者の意見を聴き、
その結果を書面にして届け出ることが
使用者に義務付けられています。
また、就業規則の周知徹底のために、
社内に掲示したり
コピーを配ったり等も
必要となります。
そうまでして副業解禁する企業は
少ないでしょうし、
これまで副業禁止のモデル就業規則を
提供していた厚労省が
いきなり副業禁止している企業を
締め付けるようなことはしにくいでしょう。
そうしたことから、
当面の間は「何も変わらない」
ということになると思います。
一方で、積極的に利用する企業が
出てくる可能性がないとは言えません。
それは、完全成果主義型の企業です。
もともと時間拘束を
重視していないでしょうから、
労働時間や残業代等を考慮していません。
そのため、副業を解禁しても
特に影響はないでしょうし、
副業を求める労働者も受け入れやすいでしょう。
そう考えると、
今回のモデル就業規則の改定は、
時間労働から裁量労働への移行を
促進することになるのかもしれません。
そう言えば現政府が推進している働き方改革では、
裁量労働制の拡大も含まれていました。
「高度プロフェッショナル制度」
野党や連合などが言ういわゆる「残業代ゼロ法案」です。
この制度は、労働者が労働時間ではなく
仕事の成果で処遇される働き方として、
何時間働こうが、あるいは働くまいが、
会社が一定の賃金を支払うという内容で、
対象となる労働者は今のところ、
高度専門職で一定の収入
(年収1,075万円以上)がある者のみとされています。
つまり、こうした制度を適用した企業は、
副業するには最適な環境ということになるわけです。
こう考えると、その良し悪しは別にして、
実に巧妙に改革しようと
計画されたものと言えるのかもしれません。
以上、いかがでしょうか。
今回のモデル就業規則の改定による副業解禁は、
当面のところ様子見という状況で、
実態はあまり変化しないということになりそうです。
一方で、現政権が長期戦略で働き方改革を
計画しており、それに基づくものだとすれば、
近い将来サラリーマンの働き方が
本当に改革されることになるのかもしれません。
個人的には歓迎したいところですが、
能力ややる気等も関係なく
“そこにいれば”給料がもらえる
労働時間型の制度を
求める人も少なくないでしょう。
そう考えると、今回のモデル就業規則改定を
契機として、徐々に論争が巻き起こる
ことになるのではないでしょうか。
当然一筋縄でいく問題ではありませんから、
今後の動向を見守っていきたいところです。
それでは、今週の報告は以上です。
次回も宜しくお願い致します。