諜報部長!お世話になってます!
さすらいの情報収集家Kです。
立て込んだ業務の関係で、
報告のお休みが続きまして、恐縮です。
今週からは再度、頑張って参ります!!
さて、今回は
「漫画村問題」についてです。
しっかりチェックしておきましょう!
■海賊版サイトが相次いで閉鎖!? 漫画村問題とは?(前半)
ご存じの方も多いと思いますが、
主要な海賊版サイトが相次いで閉鎖に追い込まれています。
政府がインターネットプロバイダーに
自主的に海賊版サイトを接続遮断
(ブロッキング)を促す緊急対策を決定しました。
この決定が各業界団体を巻き込んだ
大論争へと発展しています。
一体何がどうなっているのか、まとめてみます。
●海賊版サイトとは
いわゆる海賊版サイトとは、
漫画やアニメを始めとする著作物(コンテンツ)を
無断で複製・改変し、配信・配布する
インターネットサイトのことです。
その多くは、コンテンツを無料で公開し
利用者を集め、ネット広告による収益を主としています。
今回の政府対応では、名指して3つのサイト
「漫画村」「anitube」「MIOMIO」が挙げられており、
いずれも日本の国内法が及ばない
海外企業・サーバーで運営されているとされ、
権利者による削除要請にも一切応じない姿勢を見せています。
特に、今回政府が緊急対策として
処置を促した背景には、
違法マンガサイトである「漫画村」が
急速にその利用を拡大したためのようです。
その利用状況は、2017年9月頃から急激に増え始め、
12月には月間訪問者数(UU)が1億人を突破。
2018年1月には1億5千人を超えてきています。
(そのアクセス元は、90%以上が日本国内)
つまり、事実上の「国民的違法サイト」にまで
急成長してしまったという状況のようです。
また、この漫画村は、サイト内で自らのコンテンツを
「合法」であると主張しており、
利用者に間違った考えを助長するとともに、
現段階で漫画・書籍などの画像データのダウンロードは
違法ではないことも(音楽や動画は刑事罰の対象)
利用拡大の背景にありそうです。
●政府の緊急対応「サイトブロッキング要請」とは
4月13日に開催された
知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議において、
次のような決定がされました。
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(1)短期的な緊急措置としてのサイトブロッキング
被害が甚大で特に悪質な海賊版サイトに関して、(3)の法制度整備が行われるまでの間の臨時的かつ緊急的対応としてインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)事業者による自主的な取組としてのサイトブロッキング(以下「ブロッキング」という。)を実施し得る環境を整備するため、
「知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議」において、
ⅰ)特に悪質な海賊版サイトへのブロッキングが緊急避難(刑法第 37 条)の要件を満たす場合には、違法性が阻却されるものと考えられること、
ⅱ)ブロッキングの対象として適当と考えられる特に悪質な海賊版サイトに関する考え方について、政府としての決定を行う。
(2)類似サイトが出ることを想定した運用体制の整備
「知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議」で決定した特に悪質な海賊版サイトに関する考え方を踏まえた形で、ブロッキングの対象として適当と考えられるサイト及びそれと同一とみなされるサイトの類型化及びISP事業者、コンテンツ事業者等関係者間での実効性ある運用体制(ブロッキング対象サイトの特定方法を含む)の整備に関して議論・決定する場を知的財産戦略本部の下に設置し、類型化及び運用体制の整備について早急に結論を得る。
(3)法制度整備
海賊版サイトへのブロッキングについて、緊急の対応として(1)(2)の措置を講じつつ、並行してその法的根拠を明確にするため、通信の秘密、知る権利との関係を含む法的論点について検討を行い、関係者の理解を得つつ、次期通常国会を目指し、すみやかに法制度の整備に向けて検討を行う。
リーチサイトを通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応等について、早急に検討を進め、臨時国会又は次期通常国会を目指し法案を提出する。
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※閣議資料「インターネット上の海賊版対策に関する進め方について(案)」抜粋
要約すると・・・
①海賊版サイトの被害が甚大で急速に拡大しているから、
法整備が済むまでの緊急対策として
ISP等の民間が自主的な取り組みとして
サイトブロッキングするための環境を整備し、
考え方を決めたいと思う。
それと、刑法や憲法上の問題はあるが、
緊急避難処置として違法性はないと思うよ。
②サイトブロッキングする対象を
実効性ある形でISP等が運用できるように、
運用体制の整備について議論・決定する場を
知的財産戦略本部に設置するよ。
③もちろん法的根拠を明確にするために、
次期通常国会を目指して法整備は進めるよ。
あと、リーチサイトについても急いでやるから。
・・・ということです。
よく読んでみると、政府からサイトブロッキングを
ISP等に要請したのではないですが、
実質的に「ISPが自主的にやれ」
という圧力を加えた格好になっているわけです。
そのため、一部の報道などでは
政府が「要請」したという形で表現されています。
では、なぜこのような遠回しな形になっているのでしょうか。
それは、この対応が議論を巻き起こすと
想定していたからに他なりません。
●様々な業界・団体を巻き込んだ論争に発展
出版業界・ISP業界団体を始め、
ネット広告団体、動画団体、法曹界、
人権団体等々、様々な業界・団体が見解を表明しています。
その主だった論点は、概ね次のようなものです。
①海賊版サイトへの現場での対策は、ほぼ手詰まり
海賊版サイトの被害者である著作権者(作家)が
対策を講じるのは困難だという考え。
問題の漫画村は、海外サーバーで運営され、
その運営主体が誰であるか特定できず、
漫画村を拡散するリーチサイトは法的に問えない。
さらに、著作権法は原則的に親告罪であるため、
著作権者が告訴しなくてはならないため、
刑事責任を問うことができない。
そのため、第三者による告発ができる著作権法の非親告化について、
長年議論されてきているが、同人誌や二次創作への影響や
一部を複製する行為など微妙な問題をはらんでいるため、
現段階では一部の法整備までに留まっている。
いずれにしても、海賊版サイトによる被害が
急速に拡大しているため、緊急的な対応は不可欠であるという主張。
②憲法・電気通信事業法「通信の秘密」に抵触する
日本国憲法21条2項は、
「通信の秘密は、これを侵してはならない。」と定めている。
その趣旨を踏まえ、電気通信事業法は、
電気通信事業者の取扱中に係る
通信の秘密は侵してはならないと定めた上で、
通信の秘密の侵害に対して罰則を課している。
サイトブロッキングは、
ユーザーのアクセス先のサイトを
プロバイダが逐一確認して
それがブロッキング対象のサイトである場合に
アクセスを遮断するものであるから、
通信の秘密の「知得」「窃用」の構成要件に該当する。
今回の対応と同様の枠組みで、
児童ポルノについてもブロッキングが行われているが、
児童ポルノの流通自体が児童の人格に対する
重大かつ回復不可能な侵害であることに加え、
ブロッキング基準を定めて一定以上の悪質な
児童ポルノサイトのみ対象とするなど、
緊急避難の要件の充足に疑義のないよう慎重な考慮がなされている。
③憲法「検閲の禁止」に抵触する
政府が3つの著作権侵害サイトの具体名を挙げて
削除を要請する行為は、憲法の禁止する
政府による検閲(憲法21条2項前段)に該当するおそれがある。
④憲法「表現の自由・知る権利」に抵触する
憲法により、集会、結社及び言論、出版
その他一切の表現の自由は、これを保障する。とされており、
また、検閲はしてはならないと、定められている。
しかし一方で、表現の自由は他人の利益や権利との関係で
一定の内在的な制約が存在する。
一つは、人権の行使は他人の生命や健康を害するような
態様や方法によるものでないこと、
もう一つは、人権の行使は他人の人間としての尊厳を
傷つけるものであってはならないこと。
また、知る権利については、
民主主義政治にとっては自由な討論が不可欠であるため、
国民が争点を判断する際に必要な意見や情報に
自由に接しうることを当然の前提とする。
今回の海賊版サイトの対応については、
表現の自由については被害者がいるため
正当化できるものではないが、
政府の対応が唐突であり、
一部の議論が非公表とされており、
知る権利を侵害していると主張。
これ以外にも展開によっては
まだまだ論点が拡大していきそうな予感がします。。
実際問題、今回の政府の対応は、
児童ポルノでサイトブロックの実績があるため、
その枠組みを利用して緊急対応しようとしたと言えそうです。
当然、憲法上や法律上に疑義があるのは
承知の上での判断でしたが、
政府の解釈を加えて対応することで、
その場しのぎになると判断したのでしょう。
ですが、結果として、
それが炎上の元になった気がしなくもありません。
そうした意味では、拙速であったのは間違いないでしょう。
とは言え、月間訪問者数が国民人口を超える規模にまで
数カ月で急拡大してしまった漫画村が与える被害は、
甚大であることも容易に想像がつきます。
仮に、これが正規の法的手続きで進めようとした場合、
それまでの間、被害がどれだけ拡大するかを
考慮するとやむを得ないという判断だったのかもしれません。
一方で、反対派が主張しているのは、
漫画・アニメ業界の被害については
「ご愁傷様」といった言葉を発するまでにとどめ、
政府の対応が拙速・稚拙・無法・強権
であると言ったことのようです。
また、今回のタイミングが、
モリカケ問題で政府批判が高まっている中での対応であり、
ここぞとばかりに倒閣運動のネタになりつつあります。
さらに、他業界・団体にまで波及しているため、
「この祭りに乗らねば」という言論人や
評論家まで乱入してきており、
当面の間、あーだこーだと揉めることになりそうです。
参考)各団体等の意見書・声明等
知的財産戦略本部員 意見書
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/180413/ikensho.pdf
公益社団法人日本漫画家協会
https://www.nihonmangakakyokai.or.jp/?tbl=information
株式会社講談社
http://www.kodansha.co.jp/upload/pr.kodansha.co.jp/files/180413_seimei_kaizokuban.pdf
一般社団法人インターネットコンテンツセーフティ協会
http://www.netsafety.or.jp/files/20180411.pdf
一般社団法人 日本インターネットプロバイダー協会
https://www.jaipa.or.jp/information/docs/180412-1.pdf
日本電子書店連合
http://www.nttsolmare.com/press/2018/pdf/0416_temp.pdf
一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)
https://www.ema.or.jp/press/2018/0411_01.pdf
一般財団法人 情報法制研究所
https://jilis.org/pub/20180411.pdf
株式会社メディアドゥホールディングス(電子書籍流通事業者)
https://www.mediado.jp/mdhd/2241/
株式会社ジーニー(広告配信業者)
https://geniee.co.jp/news/20180417/140
全国地域婦人団体連絡協議会
http://www.chifuren.gr.jp/180412opinion13th.pdf
諸々長くなってしまいましたので、
残りに関しては、また次回、報告致します。
宜しくお願い致します。