諜報部長!お世話になってます!
さすらいの情報収集家Kです。

さて、今回のテーマは、
「中国製造2025」についてです。
しっかりチェックしておきましょう!

「中国製造2025」とは? 中国の成長戦略

「中国製造2025」ってご存知でしょうか?
最近ニュースなどでもチラホラでてくる単語なので
聞いたことある人も多いと思いますが、
意外とその中身は知らないのではないでしょうか。

今後も何かと話題になりそうですから、
しっかりチェックしておいてください。

●「中国製造2025」とは?

中国は、今では世界の主要工業製品の生産・輸出国です。
2010年に日本を抜いてGDP世界第2位に躍り出た後、
製造業が世界最大規模となり、200以上の工業製品を持ち、
そのうち数十の製品が世界の輸出総額の
70%以上を占めるまでに成長しています。
つまり、名実ともに世界の工場の地位を確立した
と言えるでしょう。

そうした状況をさらに強化していくために、
2015年5月、製造業振興の長期戦略プラン
「中国製造2025」が発表されました。
※英語表記では、「Made in China 2025」(MiC2025)

その中身は、製造強国になることを目指し、
10年ごとにフェーズを定めた長期戦略目標で、
これまでの中国の戦略よりも、
より製造業に特化し十分に検討され、
適切なものとなっているようです。

【中国製造2025のフェーズ】

フェーズ1 2025年:格差縮小・重点突破により製造強国入りへ

フェーズ2 2035年:工業化の実現により製造強国の中位へ

フェーズ3 2045年:イノベーション先導で製造強国のトップクラスに躍り出る

具体的な施策としては、
9つの重点活動を行うと共に10の重点産業を定め、
優先的に推進していくこととしています。

【中国製造の枠組み】

9つの重点活動 10の重点産業
1.イノベーション能力向上 1.次世代情報通信技術
2.情報化と産業化の融合 2.ハイエンド工作機械とロボット
3.基盤能力の向上 3.航空・宇宙設備
4.品質向上・ブランド構築 4.海洋工程設備・ハイテク船舶等
5.エコ製造の推進 5.先進軌道交通設備(鉄道系交通)
6.重点分野の推進 6.省エネ・新エネ自動車
7.製造調整 7.電力設備
8.サービス型製造と生産型サービス業の推進 8.農業機械設備
9.国際化水準の引き上げ 9.新素材
10.バイオ医薬・高性能医療機器

この枠組みを見れば一目でわかるくらい
先進的な内容となっており、
先進国が近年掲げてきた内容を
詰め合わせたようなものになっています。

こうした、従来はあまり見られなかった
適切な活動を中国政府が国を挙げて
本気で取り組んだとしたら、
想像をはるかに超えるインパクトとなるのは
間違いないでしょう。

ここに来て「中国がなぜこのような活動を始めたか?」は、
中国の製造業の中核でもある
「深セン(深圳)」を見るとよくわかるかもしれません。

●人類史上稀にみる成長を遂げた「深セン」

中国の製造業の成長を最も象徴する深センは、
かつて東京都ほどの広さに
人口30万人が住むさびれた漁村でした。

それが、中国最初の経済特区として1978年に改革開放され、
パソコン・電気製品などを製造する日本や台湾を含む
外資系企業の工場が多く進出し、
わずか30年ほどで人口1,400万人を超え、
珠江デルタと呼ばれる一帯まで入れると
4,000万人を超える「世界の工場」エリアとなっています。

いまでは街中では、電化されたバスや電気自動車が走り、
道端の露店ですらスマホで電子決済できるほど。

深センの中心部に住む工場勤務の若者たちは、
月給約5,000元(日本円で約8万4,000円)ほどですが、
それとは別に住居や食料を提供されるのが
一般的なので比較的裕福な生活をしているようです。

中心部のカフェでは、レイバンのサングラスをかけ
トールサイズのタンブラーを片手に、
マックブックを前に英単語混じりの中国語で会話をしている、
と光景をイメージすればわかりやすいかもしれません。

そうした若者は起業意識も高く、
2016年の新規登録企業数は約38万社以上で、
毎日1,000社以上が創業しているような状況です。

中国政府は、経済成長の新たな原動力を求めて
「大衆創業、万衆創新(大衆による起業、イノベーション)」
という政策を打ち出していますが、
それを体現している最たる例でしょう。

このように生活水準や意識が高く、
先進諸国の文化的影響を大きく受けた若者世代が
多く活発に動いているのが深センなのです。

中国製造2025の策定にあたっては、
深センなどの産業地域の組織・団体も
大きくかかわり協議・検討されてきたものですから、
合理的なものになったと言えそうです。

ですが、中国製造2025が作られた背景には
中国の強い危機感があったようです。

●中国の危機感




深センを始めとして中国の製造業が急成長を遂げた理由は、
安い巨大な労働力と労働集約型の組立工場にありました。

ですが、経済的に豊かになるにつれて賃金も上昇をしはじめ、
中国に進出していた外資系企業が
生産拠点をベトナムやインドネシアなどの
新興国に移し始めています。

中国の製造業は、国外からキーとなる部品を輸入し
組み立てて輸出するというモデルが中心であるため、
より安い労働力に移行されてしまう、
という宿命を背負っているわけです。

一方、先進国の製造業は、
産業用ロボットやIT技術などを多岐に渡り取入れ、
生産体制を自動化・合理化しており、
独自に研究開発を行った核となる技術製品を提供しています。

中国が先進国に追いつくためには、
まだまだ隔たりがあるのです。

つまり、「中国製造2025」は、
新興国からの追い上げと
先進国との格差を埋めるために打ち出された
という中国の危機感からくる国家戦略と言えそうです。

●中国製造2025は成功するのか?

中国製造2025が目指すところは、
製造のスマート化やイノベーションの促進です。

技術的にも経験的にもまだまだ足りない部分が多いですが、
今まさに中国の製造業は産業ロボットの導入や
IT化が急速に進められています。

こうした製造のスマート化を大きく支援しているのが、
産業ロボット大国である日本の企業です。

例えば、三菱電機は中国製造2025の実現に向けた
協力関係を強化するために、
中国政府直轄の研究所である
「機械工業儀器儀表綜合技術経済研究所(ITEI)」と
戦略パートナーシップを締結しています。

また、富士通は中国のスマートシティソリューションを
提供する国有大手企業の上海儀電と
製造業における競争力強化を目指し、
「スマート製造プロジェクト」で協業しています。

このように日本大手メーカーは、
中国製造2025をビジネスチャンスと捉え、
積極的に支援しているようです。

こうした点から見ると、少なくとも製造のスマート化
についてはある程度は推進されていくことになるでしょう。

ですが、米国やEUが中国製造2025について
問題視し始めている現状があります。

その背景には各国の思惑があるわけですが、
こうした中国への逆風がどの程度の持続し、
影響力を及ぼすかによって、
中国製造2025の成否が決まるといっても過言ではないでしょう。

以上、いかがでしょうか。
中国の製造業の生き残りをかけて、
大きな戦略として掲げられた中国製造2025。

中国の現状は、まだまだ大規模な
安い労働力に頼ったものですが、
一足飛びに先端生産体制を整えようとしているわけです。

こうした動きに対して先進諸国が
脅威に感じるのは当然ですが、
日本は比較的チャンスと捉えているような印象があります。

一体どちらの対応が正解だったのかがわかるのは、
もうしばらく時間がかかることになるでしょう。

さて、今回は以上です。
次回も宜しくお願い致します。