お世話になってます!
さすらいの情報収集家Kです。

さて、今回のテーマは、
「MMT提唱者来日時の記者会見」
についてのお話です。
しっかりチェックしておきましょう!

MMT提唱者来日! ケルトン教授は何を語ったのか?

■MMT提唱者来日! ケルトン教授は何を語ったのか?

MMT提唱者の一人である
ステファニー・ケルトン教授が来日されました。

国内メディアの関心も高く、様々な形で報道されています。
ですが、その多くは頭ごなしに批判する内容が多く、
「暴論」・「異端」といった字面が並びます。

本当にそうなのでしょうか?
ケルトン教授がどのようなことを語ったのかまとめてみます。

●MMTとは何か?

MMTとは、現代貨幣理論、
Modern Monetary Theoryの略称です。

MMTはいくつかの示唆に富んだ提言をしており、
注目を集めています。

最も有名なものは、
「自国通貨で借金できる国は破綻することはない」
というもの。

いまの日本は、「国の借金が1000兆円を超えて
このままでは国が破綻する」
と言われ続け消費増税を繰り返してきました。

MMTは、そうした考えを完全否定する理論なのです。
そのため、日本政府をはじめ、財務省、日銀までも
こぞってMMTを公式に否定しています。

特に、財務省はMMTを否定するための資料まで
ワザワザつくって公開しています。

その内容は、「荒唐無稽」「暴論」「異端」「支離滅裂」
といった罵声のオンパレードで、
頭から否定しているところに何か執念深さを感じます。

ですが、よく考えてみると、ただの海外の学者が提唱する理論に、
政府機関がこぞって猛反発・完全否定したことが
逆に注目を集めた格好になったのかもしれません。

その後、政府筋に近い学者なども巻き込み、
MMT総バッシングが起きているという状況の中で、
満を持して来日されたというのが、今回だというわけです。

そのケルトン教授は、MMT国際シンポジウムでの講演後、
記者会見が開かれ、質疑応答が行われました。

今回は、そこでの質疑応答に注目してみたいと思います。

●ケルトン教授が記者会見の質疑で語ったこと

ケルトン教授が記者会見で語った内容は、
これまでMMTに対する多くの誤解や誤認を解消するものでした。
少し長く煩雑ですが、ぜひ確認してみてください。

※下記のQは記者等の質問、Aはケルトン教授の回答です。

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Q.主流派経済学者のクルーグマンやサマーズがMMTを批判している。
その内容は、財政出動が金利上昇を引き起こし、
クラウディング・アウトなどで民間の需要を
減退させるようなことが引き起こされる懸念がある、
といったものだが、どう考えるか?

A.彼らが「意見」しているということはおっしゃり通りです。
ただ、彼らがMMTを批判していると私は受け止めていません。
はじめてクルーグマンがニューヨークタイムスに寄稿した際に、
MMTという学派の考え方は「財政赤字はどうでもいい」
「無制限に紙幣を刷っていい」と述べています。
サマーズも同様で両者ともMMTを誤解しています。

MMTは「赤字はどうでもいい」「無限に造幣して良い」
などと主張していません。
MMTが強調しているのは、本当の資源の制約こそ
我々が着目しなくてはならない要素であるということ、
それが何かと言えば「インフレ」です。
インフレの制約こそ、我々が注目しなくてはならないことです。

クラウディング・アウト理論の問題はその前提において、
「政府が国債を大量に発行すると民間の貯蓄が枯渇してしまい、
民間投資に仕向けられる金額が減り、金利が上昇する」
というものです。

一方、MMTの考え方は、財政赤字によって民間の貯蓄が増える、
枯渇させるのではなくむしろ補完させるということです。
つまり、クラウディング・アウト理論の欠点は、
貯蓄の供給量が固定化されているという前提にあることにあります。

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Q.日本の置かれた現状を考えた時に最もすべきことは何でしょうか?
現在の政策として間違っていることがあれば教えてください。

A.最も重要なことは日本の国民・消費者の
心理の安定化だと思います。

日本経済はアメリカ経済と同様に資本主義によって成り立っている
ところでありますが、そこで何が大切かと言えばやはり売上、
売上でもって人は動くわけです。
ですから、消費者による支出・家計部門による支出こそが
経済全体のけん引力として最も重要性が高いと言えましょう。
ですから、堅牢なる経済成長のためには
やはり消費者心理を安定化させるということ、
自分が稼いだ所得を安心して手放して借入れることによって
新たな支出に回しても良いと思って頂くということです。

もし日本経済の現状とか自分の家計の現状について
消費者が不安を抱いているとすればお金を使ってくれないでしょう。
その目標に向かって、政策決定者ができることは
いろいろとあると思います。
所得を持続あるいは増やすためにとれる手立ては、
いくつかあると思います。
例えば、国家による財政支出、予算支出であります。
金融政策、中央銀行による政策というのは、
民間部門が借りる、あるいは融資を受けることによって
はじめて機能するものです。

一方、財政政策の場合は、直接所得を引き上げることによって
効果を発することになります。
ですから、財政政策を通して所得増加を下支えすることで
消費者がより多く支出してくれる確率を上昇させることが可能です。

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Q.MMTを前提とした財政政策の唯一の制約はインフレだと
おっしゃっていますが、その場合許容される
インフレの範囲というのは、その国のどのような要素に基づいて
どのように判断に判断すればよいとお考えでしょうか?
また、インフレを抑制する手段として「税」がある
とおっしゃっていますが、税制を変更するには
政治的な複雑なプロセスを必要とします。
その中で、インフレをきちんとコントロールすることはできるか?
その場合、どのような手法によって行うのか?

A.我々自身がつくっている価格指標・物価指標によって
インフレが決定されるわけです。
ですから、インフレ指数を構成している要素を見ることによって
インフレの源泉を把握しなくてはなりません。

我々が設計しているインフレ指数の設計方法は、
例えばエネルギー料金、住宅コスト、医療コストなどが上昇すると
それらの項目に対する荷重が高いから
より高くインフレが上昇するわけです。
ですから、インフレに対する政策を決定する際には、
インフレの源泉にきちんと注目・把握した上での
対応策を検討しなければなりません。

インフレが適正水準かを考える上では、
常に所得増加率との相対性を考えた上で判断しなくてはなりません。

例えば、インフレが2~3%だったとします。
賃金上昇率が十分それについて行っているのであれば
実質的に消費者の購買力は浸食されないわけです。
ですから、インフレ率を考える際には、
インフレ率にともなった所得の上昇率が
十分であるかを考慮しなくてはなりません。

需要が増加すると、物価および生産力の両方に
圧量をかけるわけで、その両方で対応できているとしたならば
純粋なる物価上昇で、支出の痛みがそれだけ重くなっている
ということにはならないわけです。

日本もアメリカも2%の物価安定化目標を設定しておりますが、
ある意味その設定方法には恣意的なものがあるかもしれません。
ただ、インフレについてはその源泉を見なくてはなりません。
いずれ日本にもインフレの時代が到来したとするならば、
その源泉ははたして医療費なのか、だとしたら薬価の上昇率が
高すぎるのかもしれないということで処方薬の価格に関して
政府としては交渉しなくてはならないのかもしれないし、
それをけん引しているのが住宅価格だとすれば賃料引き下げとか、
より低価格の住宅建設を進めなくてはならないといった形で、
政策は必ずインフレの源泉を把握した上で
決定しなくてはならないと考えています。

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Q.教授は過去のインタビューにおいて
「日本は既にMMTを実践して成功している」
との趣旨の発言をされていると聞いている。
国会でも取り上げられたが、政府は
「実線もしていないし、MMTは非常に極端な議論である」
と切り捨てるような答弁が続いている。
こうした日本政府の反応についてどう思われるか?
また、当局者が強く否定を示していることに、
どのような背景があるとお考えか?

A.そうした類の記事は読んだことはあります。
ただ、正式な引用符がつけられて
私の発言として引用されたことはないと思います。
「日本が実践している」という発言をしたことは一度もありません。

ただ、こうは述べております。
「日本は世界に対して重要な教訓をたくさん立証してくれている」、
「MMTがここ数十年主張していたことが正しいと立証してくれた」
と述べています。

一例をあげますと、赤字があるからといって
それが自動的に利上げに繋がるわけではないし、
民間投資のクラウディング・アウトに
繋がるわけでもないということ。

一部には、赤字が90%を超えるとそこが
ティッピング・ポイント(閾値)で、そこから支払い不能に
多くの金融機関が陥って破綻が連鎖するといった論調もあるし、
量的緩和政策はインフレ的だという論調もあるけども、
日本が実践してきた多くの政策はMMTの予想が正しかった
ということを立証してくれたという風には
述べていたとこであります。

財政政策で金利は調整できるし、量的緩和だってうまく機能するんだ
ということを多く立証してくれました。
ただ、MMTを実践しているとは述べていません。
MMTにもっと整合性のある政策を日本がとっていたとするならば、
もっと財政政策に依存しているはずですし、
現状の日本経済よりも高い成長率を達成していたはずです。

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Q.MMTとしては完全雇用が達成される過程において、
一定程度のインフレが発生するとされていると思うが、
現在の日本は完全雇用がほぼ達成されている状況に近い
にも関わらずインフレの兆しはなく、財政支出も続いている。
これはMMTの考えと矛盾するのではないか?

A.そうは思いません。今の日本は2年前のアメリカと
同じ状況でないかと思います。
その時にインフレは低い水準でありまして、
2%のターゲットに到達していなかったわけであります。

追加刺激策として、インフレが必要だとなり、
なぜならば完全雇用であるからという論調が主流でしたが、
結局フタをあけてみるとそれは正しくなかったことが
後々に証明されるわけです。
つまり、アメリカ経済においては、エコノミストが思っていたよりも
余地がたくさん残っていた、今だから言えることですけども、
つまり、潜在能力がどれくらいか、雇用が限界まで到達しているかを
判断するのは非常に難しいということです。

賃金圧力がないということは、日本も完全雇用と言いつつ
過少雇用なのかもしれないし、
隠れた失業というのがあるのかもしれないということです。

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Q.日本では10月に消費増税をすることになっていますが、
財政赤字を気にすることはないというこのMMT理論で行けば
国の借金を返すための消費増税というのは必要ない
ということでしょうか?

A.はい、正しいです。(ニッコリ)

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Q.基軸通貨以外でもMMTは適応できるのか?

A.MMTはマクロ経済のフレームワークで、
次の条件を満たす経済であればうまくいきます。

自国通貨を発行する政府であること、変動相場制であること、
国債は自国通貨建てであること、この条件を満たしている国であれば
上手くいくわけで、米国も日本も英国も豪州も
すべて条件を満たしています。

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Q.日本は膨大な公的債務を抱えている中で
1,000兆円規模に膨らんでいるが、政府が自ら紙幣を発行できる
という考えに立てば公的債務がどんどん膨らんでいく事に
問題はないとお考えでしょうか?

A.そうは思いません。もし問題があるとすれば、
それはインフレという形で具現化されているはずです。
国の債務というのは、過去において政府が出動した財政支出のうち
税金で取り戻せなかった分の履歴でしかないわけです。
それが日本国債という形で貯蓄されているだけであって、
それ以上でもない。

本当にリスクがあるとしたならば、その貯蓄によって
行き過ぎたインフレでもって支出のレバレッジが高くなりすぎる
というような現象が起きているはずですけども、
日本ではそのような兆候は一切起きていないし、
しばらく起きるとも誰も思っていないわけです。

日銀が購入している国債は全て償還したと言っていい、
つまりあたかも中銀が発行したことがなかった
と見なしても構わないと思います。
つまり、問題の兆候はインフレによって現れるわけで、
一切そうした兆候は現在の日本には見られていません。

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Q.MMTをもし実践したとして、インフレが急激に進んでも
引締めに転換ができるのかどうか、
それが難しいのではないかという指摘がある。
仮に急激に引き締めた場合、インフレ化の景気悪化を
招きかねないという懸念がある。
MMT実践中にインフレを抑制する方法はどのようなものか?

A.MMTは決してインフレ的ではありません。
MMTとは処方箋であり、メガネであり、
それを通して分析することによって、
財政余地がどの程度あるかを把握するということです。

もし自国経済が、例えば現在の日本において、
生産能力いっぱいいっぱいまで稼働しているとして、
ここから新たな支出を行ったならば、これは公的部門だけでなく、
民間部門を含むどんな支出でも、銀行の信用供与とか
住宅・自動車ローンの融資とか、一銭でもやったとしたら、
それが即インフレにつながってしまうというぐらい
経済にキャパがないということは心配すべきかもしれませんが、
我々が抽象したいのはインフレリスクについて
もっと深堀した分析を行ってほしいということです。
その結果、マックスのキャパになったとしたならば、
信用供与の量を調整しなくてはならないかもしれないし、
融資の際のLTV比率を調整しなくてはならないし、
今のように銀行が貸し出しを行わないようにする
といったことを奨励しなくてはならないかもしれない。

でも、どなたもそんな心配をされていないと思います。
融資が増え、民間支出が増え、インフレになってしまう
状況にないと思います。他国がもっと日本の製品を
もっと大量に買いたくなったからといって、
日本の生産能力がそれに対応できなくなるんじゃないかと
どなたも心配されていないと思います。
ですから、その2つのことを心配していないのであれば、
あと1円政府が使ったとしてもインフレは起こらないわけです。

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Q.政策の制約は本当にインフレだけで本当にいいのか?
日本のバブルの時もリーマンショックの時も
インフレはそれほど高まっていませんでした。
つまり、インフレ以外にも金融の不均衡というのは
蓄積しうるわけで、インフレだけを見ているだけで良いのか?

A.素晴らしい指摘をして頂き、全面同感です。
十分な時間がなかったので、MMTの包括的な仕組みを
描写することができませんでした。
MMTにおいて、ハイマン・ミンスキーの研究は
極めて重要でありまして、
ミンスキーは金融バブルについて懸念していた。
レバレッジが上昇することで民間のリスクが上昇するということは
危険であるということを指摘しているわけです。
金利上昇局面において借り手のバランスシートが安全であったのが
より高いリスクに移行するということは気にしなくてはなりません。

ひとつMMTにおける重要な主張は、金融政策より財政政策に
強く依存するべきということであります。
金融政策は債務が上昇してレバレッジが高くなって
借り手による借金が増えている時に機能する。
一方、財政政策は債務に影響を及ぼすものではなく、
所得上昇をきたすということであります。
ですから、ラリー・サマーズ氏が
過去3回のアメリカの景気拡大局面はバブルによって
引き起こされたということについては全面的に同感しています。
なぜそのようなことが起きたかというと、
アメリカは財政政策への荷重を減らして
中銀による政策へ依存を高めたということ。
つまり、経済成長をきたすための条件を中銀が様々な操作によって
整えてくれるということに依存してしまったからです。

そういった中で、中銀に対して与えられている道具は
一つしかなくて、それは金利でしかないわけです。
ですから、利下げによって借入を増やす、
そしてそれによって消費を増やすという構図になる。
ところが、それが行き過ぎて債務が膨れすぎると
株価バブルだったりテックバブルだったり
住宅バブルだったりになるわけです。
ですから、民間債務が引き上がり資産価格バブルが発生する
というような経済成長が起きる。
それは健全な経済成長ではありません。

●ケルトン教授の質疑で分かったこと

ケルトン教授の質疑でわかったことは、
MMTに関する多くの記事やニュースなどが
批判的であったことによって、
MMTを間違って理解している人が多いということです。

今回、MMTに対する多くの懸念や批判は記者らによって、
網羅的に質問されていましたが、
ケルトン教授は明確に回答をされており、
多くの質問が誤解に基づくものであったことが
よくわかるものでした。

加えて、いみじくもケルトン教授がつぶやいた言葉が印象的でした。
「もう20年以上も2%の物価目標を達成できないでいる国において、
記者の皆さまから発せられる質問がすべて過度なインフレについて
の質問である
ということが関心深いと思いました」

以上、いかがでしたでしょうか。

今回の来日によって多くのメディアが取り上げ、
また一部の政党でもMMTを取り上げる動きも出始めていますから
確実に注目されていく事になるはずです。

また別の機会に改めてまとめてみたいと思います。