こんにちは!
税理士紹介サービスを営む、諜報部員のSです。
さて、今回のテーマは、
「仮想通貨税制の変更点」
に関する内容でお話をしていきたいと思います。
2017年に価格が高騰した仮想通貨。
2018年は一気に価格が暴落しましたが、
本年はビットコイン等の主要な仮想通貨は
かなり値を上げてきている為、
仮想通貨絡みで2019年分の確定申告を行う人は
増えるのではないかと思っています。
関連しそうな人は、来年の確定申告の際に
あたふたしないよう、しっかりチェックしておきましょう!
■仮想通貨の利益計算に影響!? 取得価額に関する変更点!※2019年夏
2019年6月末に国税庁からある通達が出されました。
詳細は、下記リンクをご参照ください。
※国税庁:「所得税基本通達の制定について」の 一部改正について(法令解釈通達) https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/190628/index.htm
まあ、こういったことは頻繁にあることなので、
これ自体は珍しいことではないのですが、
今回の内容は仮想通貨の利益計算に
大きく影響する内容が含まれています。
つまり、仮想通貨取引を行っている人にとって、
2020年の2月~3月に行う
本年(2019年分)以降の確定申告に、
大きく影響する可能性がある内容となっています。
●取得価額5%で計算可能
さて、上記の国税庁ページで公開されている内容を
全て解説していくと、とても長文となりますので、
多くの人に影響が出そうな内容を
かいつまんでお話したいと思います。
それが「取得価額5%ルール」です。
これは、仮想通貨取引を行う全ての人に影響がある内容です。
仮想通貨売却時における損益計算では、
取得価額(仮想通貨の原価、仕入れ値)を計算し、
売却価格と取得価額の差額が損益になります。
ですが、今回のルールは、
取得価額を売却価格の5%と計算してもOK
という内容です。
仮に100円で売却した場合だとすると、
その通貨の取得価額は5円と計算して可、
ということです。
この5%ルールは、不動産を譲渡(売却)した経験の
ある方等にはなじみ深いのではないかと思います。
不動産でも譲渡した不動産の取得価額(仕入れ値)が不明なときは、
譲渡価額の5%で取得価額を計算することになっています。
さて、話を戻しますと、
過去に仮想通貨の確定申告を
実施したことがある人であれば、
この取得価額計算が非常に面倒だった、
という人も多いのではないかと思います。
「1度だけ購入して時期を見て全て売却した」
こういった取引をしているのであれば、
計算は非常にシンプルですが、
ビットコインのような主要銘柄でも、
購入した取引所や時期によって、大きく価格が異なるので、
購入・売却を頻繁に行っている人も多いと思います。
さらに、主要な通貨ではなく、
海外取引所でしか売買できない通貨や、
ICO(取引所上場前通貨の購入)で取得となると、
更に取得価額計算は複雑になる可能性もあります。
また、あまり好ましくないケースではありますが、
売却した通貨を取得したのがかなり前の為、
取得価額を証明する資料が全く無い・・・
という場合もあるかもしれません。
こういった計算の手間が大きい、
取得価額がわからないといったときは、
「取得価額5%ルール」を用いて確定申告してもOK
ということになったのが今回の改正です。
ただし、このルールですが、
取得価額計算をほぼしなくて済む、
という手間が省けるメリットはありますが、
勿論、それ以外にもメリット・デメリットがあります。
【実際の取得価額が5%未満だったとき】
これは、非常にメリットがあるケースです。
本年売却した仮想通貨が仕入れた時よりも
めちゃくちゃ値上がりしていて、
取得価額が5%計算でも得をする場合です。
分かりやすく言うと、5円未満で仕入れたものを
100円で売却した場合です。
本来であれば、きちんと取得価額を計算して
その取得価額との差額で利益を計算しなくてはならないのですが、
今回の適用により取得価額5%計算が認められるので、
最大でも利益率は95%で収まる、ということです。
【実際の取得価額が5%以上、もしくは損失がある場合】
このケースは見てお分かり頂けると思います。
5%ルールで計算してしまうと明らかに損をする場合で、
実際より多額の利益を計上することになる、
もしくは、実際には損をしているにもかかわらず、
利益として計上されてしまう、ということです。
このケースに当てはまる場合は、以前同様、
きちんと取得価額計算を行わなくてはなりません。
取得時の取引履歴等を基に、損益計算を行い、
実際の利益、もしくは損失を計上する必要があるということです。
●追加:取得価額の計算方法について
これは今回の国税庁通達ではなく、
それより前の税制改正で確定した内容ですが、
関連するのでお話します。
今回話題に上がっている仮想通貨の取得価額ですが、
計算方法は「総平均法」と「移動平均法」の
どちらかを選択して、それで申告するということに
今まではなっていました。
ですが、個人(法人は別)の確定申告においては、
次回(2020年2月~3月実施)からは
基本的には「総平均法」で取得価額を計算、
という事に変更されました。
その為、移動平均法での取得価額計算を実施したい場合は、
次回の確定申告期日までに管轄税務署に届出を行う必要があります。
【総平均法と移動平均法】
言葉だけ聞いていると非常に難しそうな印象を
受けるかもしれませんが、単純に考えると、
「全てを通算して計算」をする総平均法と、
「その取引時点で都度計算」をする移動平均法の違いです。
例えば、ビットコイン(1BTC)が
10万円のときに5BTC購入し、
1BTCが100万円になったときに全て売却した。
こういう取引は総平均法だろうが、
移動平均法だろうが、取得価額は変わりません。
また、1BTCが10万円のときに5BTC購入、
次に1BTCが15万円のときに更に3BTC購入し、
1BTCが100万円になったときに全て売却した、
これでも、変化はありません。
総平均法と移動平均法で取得価額に差が生まれる
可能性があるのは、売却・購入・売却を繰り返す場合です。
例えば、1BTCが10万円のときに1BTC購入、
15万円のときに更に1BTC購入、
そして、30万円のときに1BTCを売却し、
50万円になったときに今度は1BTCを購入し、
100万円のときに1BTCをまた売却する、
こんな取引をしているケースです。
総平均法だと(10+15+50)÷3なので、
1BTCの取得価額は25万円になります。
ただ、移動平均法だと30万円で売却した時点は、
(10+15)÷2なので、1BTCは12.5万円です。
そして、100万円で売却したときは、
(12.5+50)÷2なので、1BTCは31.25万円です。
このように、価格が変動している状態で、
売却・購入・売却を繰り返すと、
計算方法により対象通貨の取得価額に差が現れます。
その為、このような取引を行う人は、
「全てを通算して計算」をする総平均法と、
「その取引時点での計算」をする移動平均法の
どちらの方がご自身にとってメリットのある計算方法か、
選択する必要があるということです。
ただし、移動平均法に変更を希望して届出を行った場合、
3年間は総平均法に戻すことはできませんので、
慎重にご判断ください。
●ちなみに
これは、個人的な感想ですが、
今回の通達でも国税局側は「仮想通貨」という
呼び名をそのまま継続して利用しています。
呼称として暗号資産という言い方に変更していく、
という方針であるようですが、
名実ともに仮想通貨が暗号資産に変わるのは、
もう少し先になりそうですね・・・
さて、今回は以上です。
次回も仮想通貨関連の話題に触れていきたいと思います。
この記事の序盤でも触れましたが、
2019年は主要な仮想通貨の価格が再度高騰してきており、
2017年ほどでは無いものの、利益を大きく出した人が
多くいらっしゃるのではないかと思います。
ただ、この仮想通貨(暗号資産)に関わる
税に関しては、上記のように重要な変更が多く、
まだまだ固まっていない部分だらけのものです。
その分、こういった情報をきちんと収集している
税理士とそうでない税理士では、
同じ確定申告を依頼する場合でも、
継続的に関与してもらう契約をした場合でも、
依頼者にとっては大きく結果が
変わってしまうことがあります。
また、税理士側も上記のように
仮想通貨関連の情報を全く知らない状態で
顧客から業務を引き受けることをリスクに感じる為、
どの税理士事務所でも仮想通貨関連の業務応対を
行うというわけではありません。
もし、次回の確定申告や今後を考慮して、
税理士への依頼をご検討されているようでしたら、
応対可能な事務所も限られているので、
お早目に税理士は決めた方が良いと思います。
そして、そういった税理士に心当たりが無いという方は、
無料で紹介可能な下記サービスへ是非ご相談ください。
税理士紹介ネットワーク~タックスコンシェルジュ~
https://www.tax-concierge.net/
さて、今回の報告は以上です。
また、次回宜しくお願い致します。