こんにちは!
税理士紹介サービスを営む、諜報部員のSです。

さて、前回に引き続き今回のテーマも、
「仮想通貨税制の変更点」
に関する内容でお話をしていきたいと思います。

2017年に価格が高騰した仮想通貨。
2018年は一気に価格が暴落しましたが、
本年はビットコイン等の主要な仮想通貨は
かなり値を上げてきている状況です。

前回は個人向け(所得税)がテーマでしたが、
今回は法人(法人税)の変更点に触れていきます。
法人名義で仮想通貨を保有している方、
また、今後は法人での取扱いを考慮される方は
しっかりチェックしておきましょう!

仮想通貨税制、法人の損益計算に関する変更点

■仮想通貨税制、法人の損益計算に関する変更点

法人への仮想通貨に係る税制ですが、
平成31年の税制改正で非常に影響のある
内容が変更となっています。

今回はその変更内容について触れていきたいと思いますが、
その前に、個人で保有・取引を行う人が多い
仮想通貨(暗号資産)ですが、
業務上の売上受領や支払以外の理由で
何故、法人名義で保有しているのか?
法人名義で保有・取引するメリットがあったのか?
という点からまずは触れていきたいと思います。

●法人で仮想通貨を保有するメリット

個人で取引する人の方が
圧倒的に多い印象のある仮想通貨ですが、
資産が増加した人の一部や、
元々資産をある程度保有していて
後から仮想通貨取引に参入した人の中には、
法人名義で取引を実施する人がいらっしゃいます。

こういった人達が一般的に考える
仮想通貨取引を法人で行うメリットですが、
以下の2点が主となります。

【所得税との税率差】

個人で仮想通貨取引を実施する場合、
所得は雑所得に分類されるため、
総合課税の対象となります。
綜合課税とは、給与所得や事業所得等、
その他の所得と合算して税額を計算することです。

個人の所得税は累進課税制度となっており、
所得額が低ければ税率も低いのですが、
所得が増えると税率も高くなる仕組みです。
最高税率は所得4,000万円超の時で、45%に達します。
さらに、住民税が10%で加わるので、
所得税が最高税率の場合、55%は税金となります。

※所得税率の詳細は下記ページへ記載
仮想通貨関連でよくあるお問合せ-②節税方法は?
https://www.y-chohobu.com/archives/3698

これに対し法人の場合は、
法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税、
地方法人特別税等、法人に関わる税が複数存在し、
更に税率も各々所得金額によって異なるので、
法人実効税率という言葉で概ねの税率が表されますが、
利益額が低ければ(年間800万円以下)なら25%弱、
利益額が高くても(800万円以上)でも、30%くらいです。

当然、全く儲けが無い場合や、
かなり低い場合に関しては個人での所得税の方が
税率は圧倒的に低くなりますが、
4~500万円以上儲けが出るようであれば、
法人側の方が税率は低くなり、
最高税率となった場合は、税率に20%以上の
差が出ることになり、法人での取引を行う方が
メリットが大きくなります。

【経費・損益が合算できる】

上記でも記載した通り、
個人で仮想通貨の取引を行う場合は、
所得は雑所得に分類されます。

そして、この雑所得はあまり嬉しくない
特徴が2つあります。

一つが雑所得に関連しない経費は落とせない
ということです。
要は仮想通貨取引に直接的に関わる(と思われる)
費用しか経費として認められないので、
内容や金額が非常に限られてしまいます。

二つ目が、損失が出ても他の利益と相殺できない
ということです。
利益が出た場合は、総合課税ということで
他の所得と合算されて計算されますが、
損失が出た場合は、0と同じ扱いの為、
事業や給与で出た所得と相殺が出来ません。
実際に損が出ていたとしても、
確定申告時には全く考慮されないのです。

これは、個人で取引を行うには
非常にマイナスな内容でもあるのですが、
法人になると全く事情が異なります。

法人には「雑所得」という概念はありませんので、
最終的には全ての収入と経費等を合算して
年度の損益を計算するのが法人の決算です。
その為、法人で利用した経費であれば、
計上出来ないものはありません。
(勿論、不適切な経費はそもそもNGですが)

また、決算の際に損失の方が多ければ赤字決算となり、
青色申告を申請していれば、
翌年以降に赤字分を繰り越すことが可能です。
法人が出した損失は、きちんと考慮され、
翌年以降に出した利益と相殺できることになります。

仮想通貨保有・取引を法人名義で行う人は
こういったメリットを考慮して行っていました。

●大きな変更点:決算期の時価評価で損益計上

さて、それでは本題である、
法人への仮想通貨に係る税制が
平成31年の税制改正で何が変わったか?
ですが、最も大きい変更点は、

「決算期の時価評価で損益計上を行う」

ということです。

※詳細はこちら
財務省:平成31年度税制改正の大綱(3/8)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2019/31taikou_03.htm

今までは、個人であっても法人でも、
仮想通貨を購入して、売却や譲渡、交換をせずに
保有しているだけの状態であれば損益は確定せず、
年間の収支に加える必要はありませんでした。

ですが、今回の改正によって、
法人で仮想通貨を保有している場合は、
保有しているだけの状態、全く取引をしていなくても、
決算期の時価評価で損益を計上しなければなくなりました。
つまり、含み益・含み損で損益計上するということです。

この対象となる通貨は
「活発な市場が存在する仮想通貨」とありますので、
日本国内の取引所で換金できる仮想通貨はもちろん、
海外取引所でしか取り扱っていない仮想通貨でも、
ビットコイン等の主要銘柄に容易に換金できるものは
対象になると考えた方が無難だと思われます。

そして、この改正ですが、2019年4月1日以降に
終了する事業年度からの対象となっていますので、
既に現段階で適用されています。

●この税制改正によって影響が出る人・あまり出ない人

法人が保有している仮想通貨は
「決算期の時価評価で損益計上を行う」
という変更により影響が出るのはどういう人でしょうか?

具体的に言及するのであれば、
取引は頻繁に行わず、仮想通貨の保有(ホールド)が
メインだった法人です。
すぐに換金しないが、いざ仮想通貨を現金に換える際は、
税率の低い法人で行おうと考えていた人です。

今までは保有だけの状態であれば
どれだけ含み益が多くあっても
税金は1円もかかりませんでしたが、
今回の改正により、含み益が多くあるような状態だと、
多額の利益計上、そして、多額の納税を行う可能性が出てきます。
結果として、法人が保有していた分の仮想通貨を、
納税資金捻出の為に売却することになるかもしれません。

逆に、あまり影響が出ない人もいます。
それも、上記と真逆の行動、
つまり頻繁に仮想通貨取引を行っていた法人です。
信用取引等を多く行っている法人等が
当てはまるのではないでしょうか。

何故、影響が少ないかというと、
取引が多い人は、売却と購入を繰り返している為、
その都度、利益か損失を計上していることになります。
その為、時価評価によって決算期で損益計上されたとしても、
短期間での相場の大幅な変動が無い限り、
実際の利益・損失との差が少ないということです。

株式やFXの取引においては、
申告分離課税で税率が一定であるため、
通常は個人で取引した方が
税制的にはメリットが大きいのですが、
仮想通貨取引においては、
まだ申告分離課税の対象となる見込みは立っておらず、
昨年時点の答弁で財務大臣も否定的な見解を示しています。

※ロイター:仮想通貨の分離課税化、
国民の理解得られるか疑問=麻生財務相
https://jp.reuters.com/article/crypto-aso-idJPKBN1JL0R5

こういった状況を考慮していくと、
「現段階としては」
仮想通貨での信用取引等を頻繁に行い、
年間で数百万円以上の利益を出す場合は
法人名義で活動した方がメリットあり、
ということでしょうか・・・。

ただ、これも現段階です。
仮想通貨関連の法律は今後もまだまだ
改正されていくので、現段階で有利でも、
それが将来的には約束されていません。
取引の主体を個人・法人、どちらで行うか、
どちらを選択するは自己判断ということになります。

仮想通貨税制、法人の損益計算に関する変更点

●追加:取得価額の計算方法について

前回の個人の場合においては、
仮想通貨の取得価額(原価)の計算方法は
総平均法が主ということでしたが、
法定算出方法も移動平均法ということから、
法人の場合は移動平均法での
計算方法が主体になりそうです。

勿論、総平均法でもNGということではありませんが、
取引が頻繁なケースも法人の場合は多いと思いますので、
個人の場合とは事情が異なると
理解した方が良いかもしれません。

※総平均法と移動平均法については、
前回の記事をご参照ください。

さて、今回は以上です。

上記でも触れましたが、この仮想通貨(暗号資産)に関わる
税に関しては、上記のように重要な変更が多く、
まだまだ固まっていない部分が多いものです。

毎年変更があるでしょうし、
有利・不利も法改正によって変わってしまいます。

その為、こういった情報をきちんと収集している
税理士とそうでない税理士では、
仮想通貨取引を行う個人や法人の申告内容や、
今後の節税・税金対策の内容に
大きな差が出てしまう事があります。

そして、税理士側としても、
自らが詳しくない・全く知らない分野において
顧客から業務を引き受けることのリスクを知っている為
仮想通貨が絡む申告や法人の関与依頼は、
どの税理士事務所でも応対するわけではありません。

もし、次回の確定申告・決算や今後を考慮して、
税理士への依頼をご検討されているようでしたら、
応対可能な事務所も限られているので、
お早目に税理士は決めた方が良いと思います。

そして、そういった税理士に心当たりが無いという方は、
無料で紹介可能な下記サービスへ是非ご相談ください。

税理士紹介ネットワーク~タックスコンシェルジュ~
https://www.tax-concierge.net/

さて、今回の報告は以上です。
また、次回宜しくお願い致します。