こんにちは!
税理士紹介サービスを営む、諜報部員のSです。

さて、今回のテーマも前回に引き続き、
「インボイス制度」
に関してお話をしていきたいと思います。

2019年10月1日からスタートとなる
消費税増税、並びに軽減税率制度が
目前に迫っていますが、
今回の制度変更はこの「インボイス制度」の
序章に過ぎないという考えも出来ます。

実際の制度開始はもう少し先ですが、
消費税導入開始以来の大変革ともいえるこの制度、
小規模事業者や個人事業者の方にとっては、
かなり重要な内容ですので、
現段階からチェックしておきましょう。

消費税、インボイス制度について-②免税事業者が迫られる選択

■消費税、インボイス制度について-②免税事業者が迫られる選択

前回は「インボイス制度」について
知っておくべきこと、というテーマでお話をしました。

要点をまとめますと、

  • インボイス制度=適格請求書等保存方式、
    という消費税額計算の新しいルール
  • 導入は2023年(令和5年)10月1日~予定
  • 制度導入後は、適格請求書発行事業者以外の
    請求書は消費税の仕入税額控除が出来なくなる
  • 適格請求書発行事業者に登録できるのは、
    消費税課税事業者のみ

こういったのが主だったルールとなります。

結果として、売上が1,000万円未満の事業者や、
創業直後の事業者・法人といった消費税の免税事業者にとって、
とてつもなく影響を与える制度となります。

このようなインボイス制度を踏まえ、
今回は「免税事業者が迫られる選択」というテーマで、
予測されうること等を今回はお話していきます。

●仕入税額控除の対象から外れてしまう事の意味

まずは、インボイス制度開始後に、
免税事業者が発行する請求書等が
消費税の仕入税額控除から外れてしまう、
ということの意味についてお話していきます。

ざっくりとした説明ではありますが、
事業等の儲けにかかる所得税や法人税と異なり、
消費税の納付額を求める考え方は、
「受け取った消費税-支払った消費税」
の残額を支払うというイメージです。

仮に5,000万円の税抜売上がある会社であれば、
10%の消費税導入以降の消費税込売上は
5,500万円となっていますので、
消費税を500万円受け取っている(預かっている)
ということになります。

そして、会社である以上、商品原価や営業・販売促進等、
諸々の経費を支払っていますので、
その支払っている経費の大半にも
消費税が課せられていることになります。
仮に、人件費等を除いた経費の総額が
税抜3,000万円だった場合、
消費税額は300万円を支払っていることになり、
最終的にこの会社が納める消費税は
500万円-300万円=200万円
ということになります。

ここまでが一般的な消費税額計算の話ですが、
インボイス制度開始後は免税事業者への支払い分は
消費税の仕入税額控除に含めることができなくなるため、
免税事業者と取引をしている消費税の課税事業者は
消費税額の負担が大きくなってしまいます。

「免税事業者と取引を行う課税事業者の負担増」
これが、仕入税額控除から外れてしまうことの
第一の影響です。

そして、上記の状況が起きてしまうことにより、
課税事業者と取引を行う免税事業者に対して
「何かしらの対応が求められる可能性が高い」
これが第二の影響です。

●免税事業者が迫られる選択

今回話を進めているインボイス制度導入後も
「免税事業者同士でしか取引をしない」
という事業者なのであれば影響はありません。
互いに消費税の納税が無いわけですから、
消費税分を相互に上乗せしても
儲けである所得税には影響しても、
消費税には影響ありません。

ですが、課税事業者と取引をしない
というのはかなり難しいです。
小売店や飲食店のように一般消費者向けに
役務を提供している事業者であっても、
そこでの支払いを会社の経費としたい利用者は多く存在します。
そして、その利用者が所属する企業が課税事業者である場合は、
領収書やレシートに適格請求書の要件を
満たす内容を当然求めるはずですので、
結局、課税事業者と取引することになってしまうわけです。

このように、事業者側が意図しないところで課税事業者との
取引が発生している可能性が多分に存在するため、

「免税事業者とだけ取引する」
「課税事業者と取引しない」
これが実質的にかなり難しいということになります。

そうなると、現在小規模事業者として活動している人たち、
今後新規で開業する予定の人たちといった
免税事業者の方々は、インボイス制度の際に

「免税事業者を継続」

「課税事業者になる」

どちらかを選択する必要に迫られます。

【免税事業者を継続する場合】

免税事業者を継続することにした場合のメリットは、

  • 消費税の納付免除
  • それにより、消費税申告(計算)が無い

という事につきます。

消費税は理論上、赤字でも発生しうる税金です。
小規模な事業者にとって、この負担が無いのは
非常に大きな意味を持ちます。

免税事業者を継続する場合は、
面倒な消費税申告も消費税の納付も行わないので
消費税(申告・納税)の負担が増えない、
要は、今までと同様で良いということが
最大のメリットになると思います。

ですが、メリットだけではありません。
インボイス制度開始後の免税事業者には
大きなデメリットが発生します。それは、
「請求内容に消費税額を乗せるのが難しい」
ということです。

現状、個人商店でも、フリーランスの人でも、
相手に対して商品やサービス提供を行う際、
本体価格にプラスして消費税を請求するのが
一般的だと思います。

ですが、インボイス制度が始まると、
前回の話で触れたように
適格請求書発行事業者が発行した請求書が無ければ、
消費税の仕入税額控除が出来なくなります。
そして、適格請求書発行事業者になる為には
消費税課税事業者でなければなりませんので、
免税事業者のままでは適格請求書が発行出来ません。

上段でも説明した通り、
免税事業者が本体価格に消費税を付加すると、
商品・サービスの購入者や利用者が
消費税の課税事業者であった場合、
支払った消費税を自社の仕入税額控除に
加えることが出来ない為、
免税事業者に支払った消費税分は
課税事業者が丸々被る(損する)ということです。

さらに、利用者・購入者(支払側)が「課税事業者」で、
提供者(受取側)が「免税事業者(小規模事業者)」という関係は、
俗に言う、元請けと下請けの関係のようなケースで
多分に当てはまります。

仮に、支払側・発注側である元請け側が
関係性として圧倒的に強い場合、
下請けである免税事業者は元請けが損するとわかっていて、
今まで同様に消費税を付加して請求できるでしょうか?
また、元請け側も損を被るのが分かっているのに、
消費税が付加された請求書を問題無く許可するでしょうか?

インボイス制度導入後、
免税事業者が消費税を付加して請求を行うのは
かなり難しくなってくるのではないでしょうか。

【課税事業者になった場合】

今度は逆に課税事業者となった場合です。

免税事業者である小規模事業者や、
創業直後の会社が課税事業者になるのは簡単です。
「課税事業者選択届」を税務署に提出すれば、
免税事業者水準であっても、消費税の課税事業者になれます。

インボイス制度後に課税事業者になった場合、
適格請求書が発行できる登録事業者になれますので、
「消費税額を問題無く請求できる」
ということになります。

前回触れた内容で話した通り、
適格請求書に関しては決められた内容を
満たしたものではなくてはなりませんので、
現在利用している請求書のフォーマットを
変更する必要はあるかもしれませんが、
逆に言うと、それだけの手間で
消費税額を問題無く請求できるようになります。

代金を支払ってくれる取引先も、
適格請求書さえあれば支払った消費税は
自社の仕入税額控除に加えられる為、
消費税について問題することも無いでしょう。

つまり、インボイス制度前と後で、
入金・売上額の減少を避けられるということです。

逆に、デメリットとなるのは、
「消費税の申告・納付の義務が発生」
ということです。

消費税の計算は、所得税・法人税よりも面倒です。
もちろん、簡易課税制度を選択さえすれば
そういった面倒からは解放されますが、
簡易課税の仕入率がご自身の事業実態より低い場合は、
計算が簡易で済む分、消費税納付額は多くなってしまいます。

さらに、上記でも触れた通り、
本則(原則)課税を選択した場合は、
事業がマイナス(赤字)でも発生しうるのが消費税です。
事務負担だけではなく、金銭的な負担も多い税金です。

また、ただでさえ消費税計算は難しいにもかかわらず、
今後は軽減税率制度という複数の消費税率が
混在した消費税計算になるので、難易度は更に上がります。
消費税の課税事業者となった場合、
税理士と関与していない事業者の方は
会計ソフトをご自身で利用できる人でない限り、
税理士との付き合いが必要になる可能性が高いでしょう。

さて、今回は以上です。

消費税、インボイス制度について-②免税事業者が迫られる選択

上記で触れた通り、インボイス制度導入後は、

  • 免税事業者を継続して、消費税を貰わず、
    消費税免税を享受する
  • 課税事業者を選択して、消費税を貰って、
    消費税申告・納税する

現在は免税事業者であっても
この2パターンに分かれることが濃厚です。

次回は、免税事業者のメリットが
有限になることが濃厚な状況で、
今後、最大のメリットを享受するには?
というような話を触れたいと思います。

上記で触れた通り、消費税の計算・申告応対は
会計ソフト等を不自由なく利用できる方か、
税理士の関与が無いとかなり厳しい内容です。

さらに、今後は軽減税率制度という複数税率が
混在する状況での経理となり、
上記で触れたように難易度が増す状況です。

もし、今後を考慮して、税理士への依頼を
ご検討されているようでしたら、
お早目に税理士は決めた方が良いと思います。

そして、税理士に心当たりが無いという方は、
無料で紹介可能な下記サービスへ是非ご相談ください。

税理士紹介ネットワーク~タックスコンシェルジュ~
https://www.tax-concierge.net/

さて、今回の報告は以上です。
また、次回宜しくお願い致します。