お世話になってます!
さすらいの情報収集家Kです。
さて、今回のテーマは、
「ソフトバンクグループ」
についてのお話です。
しっかりチェックしておきましょう!
■ソフトバンクG 下げり続ける株価の背景
ソフトバンクグループが投資会社に転身して早3年。
AI投資を加速させる傘下のビジョン・ファンドが
大きな収益をあげていると聞いたことある方も多いと思います。
ところが、最近ソフトバンクGの株価が下がり続けています。
一体何が起きているのでしょうか?
また、今後はどうなるのか?
まとめてみます。
●ソフトバンクグループとは?
「ソフトバンクグループ株式会社」とは、
孫正義社長率いる日本の持ち株会社です。
誰もが知っている携帯電話や通信事業をやっている
「ソフトバンク株式会社」は、
「ソフトバンクグループ」の傘下の会社です。
その他にも、いま話題の「PayPay株式会社」や
野球の「福岡ソフトバンクホークス株式会社」なども
ソフトバンクグループの傘下で、
子会社数1302社、関連会社423社を従える純粋持ち株会社です。
連結業績も凄まじく2018年度決算段階で、
売上高9.6兆円、営業利益2.3兆円、純利益1.4兆円で、
営業利益のほとんどを支えているのが、投資ファンド事業
(ソフトバンク・ビジョン・ファンド/デルタ・ファンド)
となっています。
その投資ファンド事業では、「AI群戦略」と称し
AIに特化したユニコーン企業を対象に
積極的に投資することを表明しており、
ビジョン・ファンドでは10兆円を超える資金を集め、
約1.2兆円の営業利益をあげたと発表しています。
出資または買収した企業には、ウィーワーク(WeWork)、
ARM、ウーバー・テクノロジーズ、スラック(slack)など
名だたる企業が名を連ねており、累計70社以上にも及んでいます。
・・・と、莫大な利益をもたらし、
とても好調のように聞こえるビジョン・ファンドですが、
一つ注意しておきべきポイントがあります。
それは、ビジョン・ファンドの利益のほとんどは
「投資の未実現評価損益」となっている点です。
●ビジョン・ファンド事業の営業利益のしくみ
ソフトバンクGの「2019年3⽉期 決算データシート」によれば、
営業利益は次のように記載されています。
※単位:百万円
実は、ビジョン・ファンドによる投資損益は
約1兆円の「投資の未実現評価損益」に
よって賄われていることが分かると思います。
この未実現評価損益とは、売却等による確定した利益ではない、
つまり「含み益」だということです。
あくまでも現段階の評価価格によるものであって、
実際に約1.2兆円の利益が確定したものではないのです。
ですから、今後に評価価格が暴落したり、
投資先が倒産したりすれば、この「含み益」は
一気に「含み損」にもなる可能性があるわけです。
こうした状況を踏まえた上で、最近気になる動きがありました。
ビジョン・ファンドの投資先でも特に注目を集めている
「ウィーワーク」の動向です。
●ウィーワーク・ショック
「ウィーワーク(WeWork)」とは、
米国のシェアオフィス大手企業で、
親会社の「ウィーカンパニー」にソフトバンクGが
ビジョン・ファンドを通じて巨額を出資しています。
ウィーワークの事業内容は、コワーキングスペース事業で、
キレイでハイセンスなシェアオフィスを
世界124都市、約800店舗(日本国内は6都市33店舗)で展開し、
約52万人超の顧客がいるとしています。
ソフトバンクGは、ウィーカンパニーを企業価値約5兆円と評価し、
これまでに約1.2兆円出資しており、IPO(新規株式公開)後に
取得する新株を含めて約30%を持つ筆頭株主となる予定です。
つまり、ソフトバンクGの目論見通り
企業価値5兆円で上場できたとすれば、
単純計算で約3,000億円の含み益を得ることになるわけです。
ところが、9月30日、ウィーカンパニーが
IPOを断念することを発表したのです。
その理由は、奇しくも上場に向けて
ウィーカンパニーが証券取引委員会に提出した
目論見書にありました。
ソフトバンクGに企業価値約5兆円
と評されていたウィーカンパニーが、
2018年の売上高が約2,000億円、
最終損益が約2,100億円の赤字であり、
さらに過去3年に渡って赤字が続いていたことが
明らかになったのです。
そうなると、問題になってくるのはIPO評価額です。
市場関係者によれば、ソフトバンクGが評価した約5兆円には
遠く及ばないと見られており、ウィーカンパニー自体も
約1兆円程度まで引き下げる方向で検討している
との報道も出てきました。
そうなると困るのはソフトバンクGです。
低い価格でのIPOとなってしまえば、
その段階で巨額の損失が確定してしまいますから、
IPOを断念せざるを得なかったのです。
ソフトバンクG側からの正式なコメントは
未だに出ていないようですが、当面は経営を安定させて
予定の評価額を目指すつもりだと思われます。
ところが、問題はこれだけではなかったのです。
ウィーカンパニーは、銀行から約6,500億円の融資を受けるために、
あるコミットメントラインを確約していました。
コミットメントラインとは、銀行が企業に対して
一定の期間・一定の融資枠を設定し維持するために約束する条件で、
ウィーカンパニーの場合は、
「IPOによって約3,200億円調達すること」となっていました。
つまり、銀行融資の約6,500億円とIPOによる調達の約3,200億円、
実質的に合計約9,700億円の資金調達が
できないことになってしまったわけです。
困ったウィーカンパニーは、
最大の出資者であるソフトバンクGに泣きつき、
以前より結んでいた約1,600億円のワラント(新株予約権)を
約2,700億円に増加する方向で頼んでいるようで、
ソフトバンク側はそれに応じざるを得ない状況のようです。
参考)ソフトバンク、ウィーワーク追加出資額
引き上げを検討=FT(Reuters)
https://jp.reuters.com/article/wework-ipo-softbank-group-raise-idJPKBN1WB0CL
結局のところ、ソフトバンクGはIPO断念で
巨額の含み損を抱えることになった上に、
さらに追加出資をせざるを得ない状況に
追い込まれてしまったのです。
こうなるともう泥沼で、次々と追い打ちが襲ってきています。
実は、先月末にウィーワークの共同創業者のアダム・ニューマン氏は
IPO断念の前に最高経営責任者(CEO)を辞任しているのですが、
その理由はニューマン氏の薬物常用などの
破天荒な行動が報道されたことでした。
それが辞任後にも次々とゴシップ報道が出てきており、
元従業員からのセクハラ・パワハラ訴訟なども
提訴されてはじめており、さらにリスクが高まっている状況です。
参考)ウィーワーク創業者、
「型破り」な手腕の功罪(THE WALL STREEET JOURNAL
https://jp.wsj.com/articles/SB12696131808382783557304585561282936376448
参考)全社員参加のキャンプでセックス、麻薬三昧…
WeWork社内の実態明かす「衝撃の新証言」【前編】(BUSINESS INSIDER)
https://www.businessinsider.jp/post-199759
現在ウィーカンパニーは、経営陣を全面刷新し、
全面的な立て直しに取り組んでいる状況とのことですが、
高めに設定された賃料が重くのしかかり、
先行きがかなり厳しい状況だと見られています。
特に、ウィーワークのビジネスモデルは、
不動産オーナーから物件を長期間借り上げて
小分けして又貸しするものですが、
資金調達に失敗した現在は採算の悪い物件などの解約を
進めざるを得ない状況です。
そうなると、賃貸契約を途中解約にすることになるため
違約金が発生したり、場合によっては
訴訟に発展する可能性もあるので、
さらに多くの資金が必要になってくることは
間違いない状況なのです。
このように、ウィーワークを取り巻く問題は
IPO断念だけに留まらず、様々な訴訟問題なども含めて
さらに資金を要求される可能性もあり、
泥沼化しつつあるのです。
●問われるソフトバンクGの投資判断
ウィーワーク問題を契機に、
ソフトバンクGの情勢は一気に変わったと言えます。
ビジョン・ファンドが2018年度にもたらした営業利益約1.2兆円は、
奇しくもウィーワークの累積投資額とほぼ同等であり、
仮にウィーワークが倒産するようなことになれば
営業利益が吹っ飛んでしまうレベルなのです。
こうした状況を受けて、ファンドの資金調達も
雲行きが怪しくなってきているようです。
今年5月にも大々的に発表したビジョン・ファンド2号への
資金集めが難航しているという報道も出始めています。
参考)ソフトバンクGの2号ファンド、資金集め苦戦-ロイター
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-04/PYU1F46KLVR401
また、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、
ソフトバンクGの今期営業利益予想を
従来より約6,000億円下方修正したことも報じられています。
参考)ソフトバンクG利益予想6000億円減、
ウィーワーク反映-三菱UFJ(Bloomberg)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-08/PZ187Q6KLVR601
その他にも、ソフトバンクGが約8,600億円投じ、
鳴り物入りで上場した米ウーバー・テクノロジーズも、
直近の決算への失望から過去最安値水準で推移、
2.4兆円で買収した米国の携帯電話第3位の「スプリント」も
顧客離れが激しく第4位へ転落するといった始末。。。
そうしたことが重なって、
ソフトバンクGの株価が下がり続けているわけです。
こうした状況を孫社長は今後どう立て直していくのか。
11月に予定されている第2四半期の
決算発表に注目したいところです。
以上、いかがでしたでしょうか。
ソフトバンクGの株価下落は、
投資先が不調続きだったことが原因だと分かったと思います。
ですが、この話はソフトバンクGだけの話で
終わらない可能性があります。
例えば、ウィーワークの失敗は
米国のシェアオフィス市場の限界を示したとも言われ始めており、
同時に同社が発行した社債は急落し、
投資家たちは安全資産へと逃避を始めています。
また、高額で大量に長期契約してくれた
ウィーワークが縮小することは、
オフィスオーナーをはじめとする
不動産業界のリスクが増大したことにもなります。
世界的な不況は不動産業界や
資本市場がキッカケとなることが多いですから、
そうした業界にも先行投資を進める
ソフトバンクGの動向には今後も注目しておきたいところです。