こんにちは!
税理士紹介サービスを営む、諜報部員のSです。
さて、今回のテーマは
「インボイス制度の影響」についてです。
今月から消費税の10%への増税、
そして軽減税率制度が始まりました。
受け取るレシートや領収書に関しても、
今までと変わった記載になっていて、
新制度が始まったことを感じさせます。
ですが、4年後の令和5年(2023年)に
予定されているインボイス制度導入後は、
事業者、特にフリーランスや自営業等の
「個人事業主」に多大な影響が想定されます。
ということで、今回はそのインボイス制度が
個人事業主に及ぼす影響について、
まとめていきたいと思います。
■インボイス制度が個人事業主に及ぼす影響とは?-①内容について
消費税は所得税や住民税等の「直接税」と異なり、
「間接税」の仕組みが取られています。
直接税はその名の通り、納税義務のある人・企業等が
税の納付も実施するもので、
間接税は、納税義務のある人・企業と、
その税額を納付する人が別のものを指します。
消費税だけでなく、酒税やタバコ税等がそれにあたります。
お店で買い物したときに消費税は支払いますが、
実際にその税を納付するのはそのお店(事業者)ですよね?
っていうことです。
これが消費税の制度であるため、
基本的に消費税を納付するのは事業者に限られます。
対象となる事業者は消費税納付の際、
「受け取った消費税額-支払った消費税額」
の差額を計算して、必要な消費税額を納付することになります。
ここまでが消費税とその納付における簡単な話です。
2019年10月から消費税の10%への増税と、
主に食品等に適用となる軽減税率制度が開始されました。
そして、軽減税率制度の開始により、
消費税の計算方法が変わることになりました。
2019年9月以前は、消費税は一律でしたので、
取引内容には消費税が「かかる・かからない」しか
判断基準はありませんでした。
ですが、今後は消費税が「かかる・かからない」に加え、
消費税がかかる場合は「軽減税率・標準税率」が存在します。
その為、事業者が消費税額を計算する方式も、
今までの方式から変更されています。
以前の方法は「請求書等保存方式」というもので、
消費税計算の際にルールに則った帳簿作成と、
対象取引の請求書や領収書等を保管しておくというものでした。
ですが、2019年10月以降に関しては
「区分記載請求書等保存方式」という方式に変更されました。
これは、今までのやり方に加え、軽減税率対象となる
取引が含まれる場合は、保管対象となる請求書や領収書等で
区分記載(どれが軽減税率対象かを示す)や、
軽減税率・標準税率毎に金額合計を記載することが
必要になりました。
軽減税率と標準税率が混在する取引が頻繁に行われる
コンビニやスーパーのような食品等扱う店で、
10月以降のレシート表記が変わったのは、
この「区分記載請求書等保存方式」の為です。
これに適用した領収書やレシートを発行しておかないと、
それを受け取った事業者が消費税計算をする際に
支払った税額を差し引けなくなってしまうからです。
※国税庁 区分記載請求書等保存方式の概要 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0017007-067_08.pdf
そして、この「区分記載請求書等保存方式」を
さらに厳格にしたものが「適格請求書等保存方式」、
通称:インボイス制度になります。
●インボイス制度とは?
インボイス制度、「適格請求書等保存方式」は
現行制度からどのように変わるのでしょうか?
まず、消費税計算の仕組みとしては
根本的に同じで、消費税を支払った事業者が
自社の消費税計算を行う際には、
税率に応じた帳簿付けと、その対象となる取引の
請求書や領収書等の保管が必要になります。
変更となるのは、取引時・取引後に発行される
請求書や領収書の形式で、「適格請求書」の要件を
満たすものでなくてはなりません。
記載する内容は「区分記載請求書等保存方式」を
満たす内容に加え、税率毎の税額と、
「適格請求書発行事業者の登録番号」
を記載する必要があります。
この登録番号は、事前に税務署に届出を出して、
適格請求書発行事業者として登録することで、
登録番号が発行されます。
さらに、もう一つ変更点があるとすると、
消費税が発生する取引を行った場合、
売り手側も自らが発行した請求書や領収書の控えを
保存しておく必要があります。
これは、買い手側が再発行を依頼した際に
応じる義務が発生する為です。
※国税庁 適格請求書等保存方式 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0017007-067_14.pdf
この適格請求書等保存方式ことインボイス制度は
令和5年(2023年)10月からスタートが予定
されていますが、それ以降に関しては、
受け取った領収書や請求書等がこの形式を満たしていないと、
その支払いを行った事業者が消費税額計算をする際、
自ら支払った消費税額を控除(差引)出来ないことになります。
ですので、BtoBの事業者間取引を行う人・企業は勿論、
一般客が多い飲食店や小売店等でも
この形式での請求書、領収書やレシートの発行に
応対する必要が出てくると思います。
●インボイス制度のキモ
ここまでだと、個人事業者でも小規模企業でも、
「税務署に登録して登録番号貰えば終わりじゃん」
と思うかもしれません。
ですが、ここに大きなハードルがあります。
確かに、インボイス制度後に必要となる
登録番号を取得する為には、
税務署に事前に届出を行って
適格請求書発行事業者としての登録を行う、
ということが必要なのですが、
適格請求書発行事業者となる為には、
「(消費税の)課税事業者」
でなければならないのです。
消費税は上記で記載した通り間接税の仕組みですが、
全ての事業者が消費税の納税義務がある訳ではありません。
年商が1,000万円未満の事業者や、
開業して1~2年目の事業者は「免税事業者」ということで、
消費税申告・納付が免除されています。
消費税を受け取っても、納付しなくていいということです。
この免税事業者が消費税納付免除によって
受けられるメリットは、
小規模事業者や開業直後の事業者への
優遇施策でもあったのですが、「益税」といって
税金分で得をしてしまうことが
問題視されている部分もありました。
ですが、このインボイス制度導入後は
支払いの請求書・領収書等に登録番号付きで
適格請求書の要件を満たすものが求められ、
免税事業者の消費税請求が難しくなるので、
「益税防止」がインボイス制度のキモ
と言われている部分もあります。
●インボイス制度後の個人事業主
免税事業者は対象となるのが開業直後か
売上の少ない小規模事業者なので、
自営業やフリーランスで活動されている人等、
大半の個人事業主の方が
免税事業者に該当しています。
このインボイス制度後は免税事業者のままだと
適格請求書が発行できなくなるため、
(特にBtoBの人は)売上に消費税分を乗せて
請求するのが難しくなります。
そうなると、自分が支払う仕入や経費では
消費税が付加された請求を払うのに、
自らは消費税分を受け取れないということなり、
利益がかなり目減りすることになります。
簡単な計算ではありますが、売上800万円、経費400万円、
という事業を行っている人がいたとします。
インボイス制度以前は、消費税を乗せて請求してOKなので、
800万円に対して消費税を10%付加して、880万円の受領。
経費にも10%乗せて、440万円の支払い。
880万円-440万円の残り440万円がこの人の利益でした。
ですが、インボイス制度後も免税事業者を継続すると、
800万円の売上には消費税が乗せられないのでそのまま、
400万円の経費には10%付加されて440万円の支払い、
800万円-440万円で残りは360万円となり、
消費税分の80万円が収入減となってしまいます。
このような状態を回避するには、免税事業者水準であっても、
課税事業者を選択して消費税を請求できる方が
自らに残る金額が大きくなると思うのですが、
課税事業者になると、当然ですが、
消費税の申告・納税が必要になります。
そして、消費税の申告・納税に関しては、
インボイス制度までに簡易な方式が始まるかも?
と言われていますが、基本的に税理士に
申告を依頼しないと難しい内容なので、
税理士に依頼せずに申告を行っていた人には、
税理士の費用も発生することになります。
税理士と関与することは、節税的な助言がもらえたり、
今まで青色申告が出来なかった人はそれが適用出来たりと
メリットもあるのは事実ですが、
課税事業者になることで、それ以前よりも
支払いが増加することだけは事実です。
現在自営業・フリーランスで活動する
個人事業主の方で免税事業者の対象者は、
インボイス制度後は
- 免税事業者を継続して消費税の請求を諦める
- 課税事業者を選択して消費税の納付を行う
このどちらかを選ぶ必要が出てきます。
どちらにおいても現状より利益が減るのは
間違いないのですが、
何か方法は無いのか?
回避できないのか?
こういった点に関しては、
次回触れてみたいと思います。
さて、今回は以上です。
2023年から始まるインボイス制度は
個人事業主に影響が多大なことは間違いありません。
だからこそ、このインボイス制度が開始される前が
免税事業者としての優遇を受けられる
最後のチャンスですので、開業や事業開始には
最適な時期とも言えます。
これから事業を開始しよう、副業を始めよう、
フリーランスで仕事を受けよう、
どういった活動でも始めやすい現在なので、
考えがある人は是非積極的に進めることを
おススメ致します。
その上で、事業開始・融資・確定申告・節税等
諸々のことに不明点があれば、
税理士と早い段階から付き合うのも手です。
どちらにしても、インボイス制度以降は
消費税の絡みで依頼することが濃厚です。
税理士のメリットを享受するなら、早い段階からどうぞ。
税理士を探す場合は、知人や取引先に
紹介をしてもらうのが手っ取り早いですが、
声掛け出来る人に心当たりが無い場合や、
出来れば現在の知人とは無関係な税理士へ
依頼したいという場合は、無料で紹介可能な
下記サービスへ是非ご相談ください。
税理士紹介ネットワーク~タックスコンシェルジュ~
https://www.tax-concierge.net/
さて、今回の報告は以上です。
また、次回宜しくお願い致します。