お世話になってます!
さすらいの情報収集家Kです。
さて、今回のテーマは、
「相続関連の裁判」
についてです。
しっかりチェックしておきましょう!
■不動産での相続税対策に待った!? 東京地裁が異例の判決
いまが空前のブームとも言われている相続税対策。
第一次ベビーブームの団塊の世代が後期高齢者になり、
遺産相続を考え始めていることから
相続税対策のニーズが急増しています。
そんな相続税対策の中でもメジャーなものが
不動産を使った相続税対策です。
ところが、その不動産による相続税対策が
使えなくなる可能性が出てきました。
一体どういうことなのか、まとめてみます。
●そもそも相続税対策とは?
そもそも相続税対策とは、
遺産を相続する際に納税する金額を
減らすためのものです。
その方法には様々なものがありますが、
最もメジャーな対策として
不動産の購入を使ったものがあります。
例えば、現金5億円の資産を持っている人がいるとします。
この人が亡くなった場合、5億円の現金は
相続財産となり、相続税の課税対象となります。
この方の遺産を相続する人が、
仮に子供1人だったとすると、
1億9,000万円が相続税額となります。
この時、もし5億円が現金でなく、
5億円で土地を購入していた場合はどうでしょうか?
この方が亡くなった場合は、
当然5億円の土地が相続財産となります。
ですが、課税対象額は購入時の金額ではなく、
亡くなった時の土地の評価額で決まるのです。
土地の評価額は、路線価(円)×地積(㎡)できまりますので、
仮に路線価が100万円、土地面積が400㎡だとすると・・・
100万円×400㎡=4億円が
土地の評価額となり課税対象となります。
先ほどと同じ条件で子供一人が相続すると、
相続税額は1億4,000万円となり、
現金で持っていた場合と比べて
5,000万円節税できたことになります。
なぜこのようなことになるかと言えば、
路線価と市場価格の価格差にあります。
もともと路線価は市場でやり取りされている金額の
80%程度に設定されています。
ですから、現金を土地に変えてしまえば、
それだけで評価額を低く抑えることができるのです。
このように、土地などの不動産を購入することで
節税することができるため、非常によく使われている
ポピュラーな節税方法なのです。
ですが、この方法に黄色信号がでるニュースが
飛び込んできました。
●路線価での評価を否定する判決が!?
ここでニュースを見てください。
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相続税で「路線価」を否定 地裁判決、”節税”に警鐘
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52324200Y9A111C1CR8000/
2019/11/18 日本経済新聞
「路線価に基づく相続財産の評価は不適切」
とした東京地裁判決が波紋を広げている。
国税庁は路線価などを相続税の算定基準としているが、
「路線価の約4倍」とする国税当局の主張を
裁判所が認めたからだ。路線価は取引価格の8割のため
節税策として不動産を購入する人もいる。
だが相続税の基準となる路線価と、
取引価格に大きな差があれば注意が必要だ。
8月末の判決で東京地裁が路線価に基づく
相続財産の評価を「不適切」としたのは、
2012年6月に94歳で亡くなった男性が
購入していた東京都内と川崎市内のマンション計2棟。
購入から2年半~3年半で男性が死亡し、
子らの相続人は路線価などから2棟の財産を
「約3億3千万円」と評価。
銀行などからの借り入れもあったため、
相続税額を「ゼロ」として国税側に申告した。
だが男性が購入した価格は2棟で計13億8700万円で、
路線価の約4倍だった。国税当局の不動産鑑定でも
2棟の評価は約12億7300万円で、路線価とはかけ離れていた。
このため国税側は「路線価による評価は適当ではない」と判断。
不動産鑑定の価格を基に「相続税の申告漏れにあたる」と指摘し、
相続人全体に計約3億円の追徴課税処分を行ったが、
相続人らは取り消しを求めて提訴していた。
土地や家などの相続財産は「時価」で評価する
と法律で決められている。ただ、国税庁は
「納税者が時価を把握することは容易ではない」として
主要道路に面する土地について「路線価」を毎年発表し、
相続税や贈与税の算定基準としている。
路線価は土地取引の目安となる公示地価の8割。
このため現金よりも不動産を購入して相続した方が
税金が安くなる傾向があり、
“節税”目的での不動産取得は広く行われている。
今回の判決では「特別の事情がある場合には
路線価以外の合理的な方法で評価することが許される」と指摘。
今回は「近い将来に発生することが予想される相続で、
相続税の負担を減らしたり、免れさせたりする取引
であることを期待して実行した」と認定し、
国税の主張する不動産鑑定の価格が妥当とした。
原告の相続人らは不服として控訴している。
今回、国税当局は国税庁長官の指示で
財産の評価を見直すことができる通達の規定
(財産評価基本通達の6項)を適用して価格を見直している。
相続税の算定基準を路線価とする根拠でもある通達だ。
通達は国税当局の判断で財産の評価を変えられるため
「国税の伝家の宝刀」とも呼ばれている。
だがどんな場合に宝刀が抜かれるのか明確な基準はなく、
判決に困惑する税理士も少なくない。
相続税の課税対象は14年は4.4%にとどまっていたが
15年1月から対象が拡大された。
17年に亡くなった人では8.3%とほぼ倍増しており、
相続財産の評価が求められる機会が増えている。
相続税に詳しい佐藤和基税理士は今回の判決を受け、
「金額の大きな相続では、手法やリスクの検討を
これまで以上に慎重にしないといけなくなる」と懸念する。
税務訴訟に強い平川雄士弁護士も
「正当な不動産投資をも萎縮させる可能性がある。
国税当局は通達を適用する基準を明確にすべきだ」
と指摘している。
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記事にあるように、不動産を購入するなどして
納税額をゼロにして申告したケースで、
相続税の申告漏れだとして、
路線価による価格評価を否定する判決がでました。
今回のケースでは、購入価格が路線価の4倍にも上り、
不動産鑑定価格とも大きくかけ離れていたこともあり、
例外的な事例となった可能性はありますが、
いくつか重要なポイントがあります。
①「路線価以外の合理的な方法で評価することが許される」
路線価以外の価格評価を認めたことは、
実はかなりおかしい判決という気がします。
そもそも我が国は申告納税制度を採用しているので、
基本的に納税者が自分で計算して申告する制度になっています。
不動産の相続についても納税者が自分で計算できるように、
国税庁が路線価を毎年決定して発表しているのです。
つまり、国税庁は実質的に毎年土地の評価額を決定しており、
それに基づいて納税しろとやっていたわけです。
今回の判決は、それを後出しジャンケンさながら、
不動産鑑定価格の方が高いので
そっちで納税しろと決定したことになります。
納税者から見れば、たまったものではありません。
決められた手続き通りに計算して
正当な申告をしているわけですから、
あとから勝手に別の方法で計算されても
当然納得できないはずです。
また、今後は不動産鑑定価格に引っ張られるとすれば、
狙った土地の売買を繰り返し取引実績をつくり、
不動産価格を意図した金額に誘導するような手口が
横行する可能性もでてきます。
いずれにしても今回の判決は、
国税庁に大きな裁量を与える内容となっており、
物議を醸し出すのは間違いないでしょう。
②「近い将来に発生することが予想される相続で、相続税の負担を減らしたり、免れさせたりする取引であることを期待して実行した」
これについては、不動産取引の全てが対象である
とも言えるし、全てが違うとも言えてしまいます。
そもそも不動産の購入者が何を目的に買ったのかを
立証することは困難であるはずです。
最近では、不動産販売の広告や営業でも、
相続税対策を謳い文句としていることも少なくありませんから、
これだけ一般に浸透しているものを
「今になってダメだと言われても・・・」
というのが多くの人が感じていることではないでしょうか。
●今後どうなるのか?
今回の東京地裁の判決では、
このような結果となってしまいましたが、
原告は控訴していますから、
決着がつくのはまだ先ということになりそうです。
とは言え、不動産業界や税理士業界に与えた
インパクトは強く、相続税の算出には
路線価だけではなく不動産鑑定もするような
動きも出始めています。
そういう意味では、裁判での最終的な判決がでるまでの間は、
しばらく混乱する可能性もありそうです。
以上、いかがでしたでしょうか。
最も一般的な不動産購入による相続税対策が
裁判で否決されたことで、
業界ではちょっとした話題になっています。
もし今回の判決内容で厳格化されれば、
多くの不動産が売りに出され
大暴落する可能性もないとは言えません。
そもそも人口減少によって不動産価格は
数年後に暴落すると予見されている中での
ネガティブなニュースですから、
今後の動向にも注目したいところです。